煎物(読み)せんじもの

精選版 日本国語大辞典 「煎物」の意味・読み・例文・類語

せんじ‐もの【煎物】

  1. [ 1 ] 茶または枇杷葉陳皮乾薑(かんきょう)などの薬草を煎じた飲み物。また、煎じて薬用にするもの。
    1. [初出の実例]「御水瓶に煎じ物を入れて持たせられたりけるが」(出典:五代帝王物語(1302‐27頃)亀山)
  2. [ 2 ] 狂言。各流。祇園会(ぎおんえ)の頭人仲間が囃子物(はやしもの)の練習をしていると、煎じ物売りが来て囃子物に合わせながら売り、さらに羯鼓(かっこ)打ちや水車がえりなど頭人をまねて舞い、炮烙(ほうろく)を割ってしまう。「天正狂言本」で「おせじ物」。「狂言記拾遺)」で「せんじ物売」。

いり‐もの【煎物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 肉類野菜類などを水分の少なくなるまで煎った料理。いりやき。また、油でいためたもの。〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. [初出の実例]「いざこれをいり物にしておまらせう」(出典:虎明本狂言・鱸庖丁(室町末‐近世初))
  3. 米、麦、豆などを煎ったもの。煎りまめ、煎りごめなどの類。
    1. [初出の実例]「おもしろき物の品々〈略〉冬はたくひのまにて、いり物などして、手づから、みづからしゃくしをとり」(出典:仮名草子・尤双紙(1632)下)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の煎物の言及

【囃し物(囃子物)】より

…《末広がり》など脇狂言の果報者物に用いられるが,太郎冠者が主人の機嫌をとるなどの設定で謡われ,小鼓,大鼓,太鼓が伴奏し,シャギリ留めに連結する。また,《煎物(せんじもの)》《鈍太郎(どんだろう)》などでも,神事の山車(だし),手車などの囃子に用いられている。ただし,これらはシャギリには続かず,《煎物》以外は打楽器の伴奏も入らない。…

※「煎物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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