ドビュッシーの初期の代表的な管弦楽曲。ドビュッシーはこの作品で自己の作風を確立すると同時に,20世紀のオーケストラ作品の方向を決定した。マラルメの同名の象徴詩に感動した作曲者は,1892年,〈前奏曲〉〈間奏曲〉〈敷衍曲〉の3曲からなる大作に着手したが,結局〈前奏曲〉だけを94年9月に完成した。初演は,同年12月22日,サル・ダルクールでG.ドレの指揮によって行われた。バレエ・リュッス(ニジンスキー振付)によるバレエとしての初演(1912年5月29日)は,センセーショナルな話題を集めた。ドビュッシーは初演のときのプログラムに次のように書いている。〈《前奏曲》の音楽は,マラルメの美しい詩のひじょうに自由な挿画です。この音楽は詩を総合しようとしたものではありません。この作品はむしろ連続する装飾であり,そこで牧神の欲望と夢が午後の暑さのなかで動いていくのです。それから妖精たちと水の精たちがおずおずと逃げるのを追うのにあきて,牧神は,ついには実現される夢,自然界をすべて手中に収めるという夢に満たされて酔い心地のまどろみに身を任せます〉。
執筆者:船山 隆
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… 卒業後大賞受賞者としてローマに滞在,留学作品に合唱つきの交響組曲《春》,カンタータ《選ばれた乙女》(ロセッティ詩のフランス語訳)などがあるが,後者はほとんどパリでつくられたもので,93年初演されていささか彼の名を世間に知らせた。同年末に弦楽四重奏曲,翌年末マラルメの詩に基づく《牧神の午後への前奏曲》と,傑作があいつぐ。かたわら,熱狂していたR.ワーグナーへの批判がめざめた。…
※「牧神の午後への前奏曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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