物力銭(読み)ぶつりょくせん(その他表記)wù lì qián

改訂新版 世界大百科事典 「物力銭」の意味・わかりやすい解説

物力銭 (ぶつりょくせん)
wù lì qián

中国,金朝の世宗が実施した財産税。猛安謀克(もうあんぼうこく)戸や奴婢を除くすべての漢人と渤海人が対象となった。世宗は1164年(大定4)に各地方に特使を派遣して,人民が私有する田地屋敷(ただし本人が居住する屋敷は除く),車,家畜作物,現金などの財産を調べ,それにもとづいて物力銭を徴収した。物力銭は独立の税であったが,また賦役や免役銭を課す基準にもなった。こののちも負担の公平を期すために財産調査はほぼ10年ごとに行われたが(通検推排という),物力銭の総額はほとんど変化しなかった。これに対して物力銭に従って課された賦役や免役銭はしだいに過重になっていった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「物力銭」の意味・わかりやすい解説

物力銭
ぶつりょくせん
wu-li-qian; wu-li-ch`ien

中国,代に行われた総合財産税。第5代皇帝世宗が,財政難打開のために考案し,大定4 (1164) 年以来実施。おもに漢人の私有財産田園,現住居以外の邸舎,車,畜類,現金,国外で贈与された臨時収入などの多寡を査定した通検推排 (10年ごとに実施) に基づき,課税した。徴収は年々きびしくなり,またおもに漢人を対象としたので,漢人の対金反感を強めた。物力銭 (税) は次第に他の種々の課税の基準とされるようになった。

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世界大百科事典(旧版)内の物力銭の言及

【金】より

…そのうえ,外征を始めると,たちまち財政難におちいった。財政難を切り抜けるために考え出したのは,物力銭(ぶつりよくせん)(一種の財産税)の徴収である。物力銭を定めるための財産査定は,通検・推排といい,1164年(大定4)以後1204年(泰和4)に至るまで,原則として10年ごとに実施せられたが,公平な税負担を標榜しながら,実際には増収をねらったため,各所で問題がおこった。…

※「物力銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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