日本大百科全書(ニッポニカ) 「犯罪と刑罰」の意味・わかりやすい解説
犯罪と刑罰
はんざいとけいばつ
Dei delitti e delle pene
イタリアの刑法学者ベッカリーアが1764年に発表した著書。本書は当時の専制的な刑罰制度とその運用に対して痛烈な批判を浴びせたもので、近代刑法学の黎明(れいめい)を告げる名著である。ベッカリーアは、国家の刑罰権の基礎にあるものは社会契約であるとした。すなわち、各人は自分の自由を確保するために、その自由の一部分を供出して社会をつくった。その供出された自由の総和が刑罰権の基礎であり、「この基礎を逸脱する刑罰権の行使は、すべて濫用であり不正である」として、罪刑法定主義、死刑廃止、拷問の禁止、法律的平等などを主張した。
[小松 進]
『風早八十二・風早二葉訳『犯罪と刑罰』(岩波文庫)』