改訂新版 世界大百科事典 「琉球織物」の意味・わかりやすい解説
琉球織物 (りゅうきゅうおりもの)
沖縄では琉球王朝時代から織物は盛んで,それらは日本,南方,中国,朝鮮のものを吸収し,発展をとげてきた。とくに絣は世界一ともいえるほどに大成し,地域に自生したり,栽培したりした素材と色素をすべて工夫・利用し,独自の技法をあみ出して特異の織物文化を築いてきた。素材としてはバショウ,チョマ(苧麻),木綿,絹および紬,リュウゼツラン(今は織られていないが桐板(とんびやん)の材料といわれる)などが用いられる。色素は琉球藍,グール(沖縄サルトリイバラ),テカチ(車輪梅),桃皮,クルボー(琉球柿),クール(紅露,ソメモノイモ),フクジ(福木),クロトン等に泥田(鉄分),石灰,シーカーサー(酸分)などの成分を混ぜ合わせる。輸入の色素や化学染料も併用される。14世紀には芭蕉布の絣が織られはじめ,王府の御絵図帳の図数は700枚に及んだ。それぞれの絣柄には生活環境にちなんだ名称があって,80種ほどの基本柄とその展開は600ともいわれる。それらを組織,縞とともに組み合わせている。これらの絣は絵図絣と括りのずらし絣,摺込み絣,織締め絣などの技法で作られる。織物の種類をあげると首里の織物,那覇の織物,とくに手縞,ロートン織,花倉織,絽織(ろおり),浮織,芭蕉布,読谷山花織(花織),琉球絣,久米島紬,宮古上布,八重山上布,ミンサー織,板花織など,きわめて特異な技法と感覚表現がなされている。それらは平織と紋織に分別でき,すべて手間のかかる手仕事でなされる。歴史的にたいへん厳しい貢納制度のなかで美の表現に苦しさをまぎらしたともいえる。生産量は琉球絣2~3万反,久米島紬6000反を筆頭に,工芸品的な生産が営々と行われている。
執筆者:宮坂 博文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報