イトバショウ(リュウキュウバショウ)の繊維で織った布地。バショウの繊維を灰汁(あく)で煮たのち割竹の間に挟んで繊維だけを取り出し、さらに裂いて細い繊維としてから績(う)む。染色は、テカチ(テーチキ、車輪梅(しゃりんばい))で褐色に、泥藍(どろあい)で紺色に染める。柄(がら)は縞(しま)、格子のほか絣(かすり)があり、番匠金(ばんしょうがね)(大工のかね尺の模様)もよく使われる。製織は高機(たかはた)を使うが、居座機(いざりばた)も使用されていた。沖縄、奄美(あまみ)大島の特産。同地方は高温多湿であるため、粗く通風性のある芭蕉布が好まれ、古くから着用されてきた。とくに琉球(りゅうきゅう)王国時代には、紬(つむぎ)、花織などとともに課税の対象となったことから、生産は拡大されたが、一方、農民は過酷な労働を強いられた。現在では生産量は少なくなったが、沖縄本島喜如嘉(きじょか)を中心に、竹富(たけとみ)島に産出し、夏の着尺地、座布団地などに使われる。1974年(昭和49)に喜如嘉の芭蕉布が国の重要無形文化財に指定され、喜如嘉の芭蕉布保存会がその保持団体として認定、2000年(平成12)には同団体の代表であった平良敏子(たいらとしこ)(1921―2022)が国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。
[角山幸洋]
イトバショウの葉鞘(ようしよう)の繊維を利用して織った布地。イトバショウは12~13世紀ころから栽培され,素材として用いられたと推定される。かつて沖縄県全域で織られ,琉球王朝への貢納布に使われたが,現在は沖縄本島北部の大宜味(おおぎみ)村喜如嘉(きじよか)と今帰仁(なきじん)村を主産地とするが,八重山列島の竹富島などにも残っている。喜如嘉のものは精細で絣(かすり)柄が多く,今帰仁のものは素朴な縞が多い。繊維を手績(てうみ)して撚りをかけ,琉球藍や自生のテカチ(シャリンバイ)で先染めにしたうえ,手織機で平織にする。無地の生芭蕉,縞芭蕉,絣芭蕉がある。地の色は茶褐色でやや堅く張りがあり,冷ややかでさらりとしているので夏季の衣料に適している。かつては県内でも広く着られていたが,現在はわずかしか生産されないため高級夏着尺や夏座布団地,紅型染地として,また芭蕉紙などにして珍重される。
執筆者:宮坂 博文
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…伝統的な特産品工業の泡盛,紅型(びんがた),陶器,漆器などは首里,那覇に生産地がある。南風原(はえばる)町の絣,大宜味(おおぎみ)村の芭蕉布,久米島のつむぎ,宮古・八重山の上布などは特産品である。 27年間にわたるアメリカ統治の影響は,沖縄の政治,経済,社会など各面におよんでいる。…
… バナナは,果実が食用になるだけでなく,雄花序や若芽は野菜とされ,根茎は家畜の飼料に利用される。リュウキュウイトバショウのように偽茎から繊維をとり出して芭蕉布(ばしようふ)やマットを編んだり,潤大な葉は食料品を包むのに広く利用されているし,巻きタバコの巻紙代用にもされる。 野生のバナナの種は東南アジアからニューギニアに30種以上も知られ,ヒメバショウM.coccinea Andr.のように花の美しいものは観賞に用いられ,また種子のデンプン質の胚乳や若芽,花序が食用にされる種も多い。…
※「芭蕉布」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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