沖縄県宮古島産の苧麻(ちょま)織物で、その起源は古く天正(てんしょう)年間(1573~92)ごろにさかのぼるという。宮古紺上布といわれ、上納布として用いられ、薩摩(さつま)藩からも注文を受けて製織された。江戸時代に薩摩上布といわれたものは、この宮古上布および八重山(やえやま)・石垣(いしがき)島産の八重山上布であったといわれる。1887年(明治20)ごろ平良(ひらら)の士族の女子の内職として一時盛んにつくられたが、その後安価な台湾産チョマを用いるに至ってやや品質低下をきたしたことがあった。
宮古上布は古来、布の薄いのが特徴で、優秀品は天保(てんぽう)銭の穴を通るといわれた。仕上げ法に特徴があり、松葉を煮出した液で煮沸したのち、生麩(しょうふ)または葛粉(くずこ)で糊(のり)付けし、乾燥後杵(きね)で打ち、水洗して糊を落とし、これを数回繰り返して仕上げる。八重山上布に比べて杵打ちの回数が多く、独特の光沢をもっているのが特徴である。1978年(昭和53)宮古上布保持団体が国の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。
[山辺知行]
麻織物の一種。沖縄県宮古島産の上布で,越後上布とならび夏着尺地の双璧(そうへき)とされる。近世に沖縄を支配した薩摩藩がその流通をつかさどったので薩摩上布とも呼ばれる。1583年宮古の部落長,下地真栄の妻,稲石(いないし)がくふうしてつくり出し琉球王尚永に献上したのが始まりと伝えられる。その後王府の御用布に指定され,1659年(万治2)以後人頭税賦課に伴い薩摩藩への貢納布として生産され,1903年の地租条例実施まで続いた。平織で縞と絣があり,琉球藍(泥藍)と蓼藍(すくも)の混染による紺地と白地がある。原料は島産のチョマ(苧麻)の手紡ぎ糸を経緯に使い手織にする。織締絣による細かい柄表現は織物工芸の王ともいわれる。繊細で精巧な上布なので,1反織るのに2ヵ月を要するものもある。織り上げた後,きぬた仕上げをする。ろう引きしたような光沢があり,風合いが滑らかで薄く通気性に富む。年間1000反程度の生産が保たれ,1978年,国の重要無形文化財に指定された。
執筆者:宮坂 博文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
…〈上布〉の語は,献上,上納された布の意との説もあるが,江戸時代には上布,中布,下布などの呼称があり,糸の細いものを上布と呼んだ。日本に自生,もしくは植栽する苧麻(ちよま)(カラムシ,ラミー)や大麻から採った苧(お)を,細かく精良に手績(てうみ)した糸を経緯に使い織り上げたもので,越後上布,宮古上布,八重山上布,能登上布等が歴史も古く有名である。上布は総じて細い糸を使うため軽くて通気性に富み,汗をかいても肌にべとつかず,夏季衣料の最高のものとされる。…
…その理由は,この両地域が米・麦・粟などのかわりに反布(たんぷ)を納めることを義務づけられていたからである。1人当りの租税負担額に応じた反布を織らせるためにきびしい監督体制が設定されていたが,そのとき生産された布が今に伝わる〈宮古上布〉〈八重山上布〉である。過酷な税制度であったため各地に悲劇的なエピソードが伝わっているが,中でも宮古の〈人頭税石〉,与那国(よなぐに)島の〈久部良割(くぶらばり)〉は有名である。…
…琉球王朝時代から明治期に至るまで,過酷な人頭税が課せられていたが,1893年からの新潟県人中村十作,那覇出身の城間正安らの指導による人頭税廃止運動で,1903年にようやく撤廃された。貢納布であった宮古上布は,78年に国の重要無形文化財の指定を受けた。北部の島尻から北へ海上約4kmの大神島(面積約0.3km2)は御嶽(おたけ)信仰の祭事に古くからの伝統を守り,外来者は参加できない。…
…また,琉球王朝時代から明治初期に至るまで,過酷な人頭税が八重山列島と同様に課せられていた。その貢納布であった宮古上布は,1978年国の重要無形文化財に指定されている。島はサトウキビを基幹作物とし,冬から春にかけての端境期に出荷されるカボチャ,トウガン,スイカなどの野菜や,タバコ,花卉が栽培され,養蚕や畜産も盛んである。…
※「宮古上布」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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