家庭医学館 「環境と健康のかかわり」の解説
かんきょうとけんこうのかかわり【環境と健康のかかわり】
人間は、生活のために環境に影響を与え、同時に周囲の環境に適応しながら生活しています。
人間が、環境の自浄能力を超えた影響を与えると環境は悪化し、その程度が、人間の適応能力、代償機構の限界を超えると健康障害がおこってきます。豊かな文明生活を可能にする産業活動は、大気、水、土壌を汚染し、その結果おこった四日市(よっかいち)ぜんそく、水俣病(みなまたびょう)、イタイイタイ病、慢性ヒ素中毒などの公害病(こうがいびょう)をわれわれは経験しています。
また、産業活動の現場に従事する人は、職場環境が悪くなると、さまざまな職業病(しょくぎょうびょう)に悩まされることになります。
このような環境の変化に起因して発生する健康障害を環境起因性健康障害といいます。
◎環境問題の現況を知ろう
環境は、生物学的環境(細菌、ウイルスなど)、物理的環境(温度、湿度、気圧、騒音、放射線など)、化学的環境(重金属、有機溶剤など)、社会経済的環境(貧困など)に分類されます。
環境起因性の健康障害が発生しないように、人間の健康を保護し、維持するように、これらの環境を一定以上のレベルに保つ基準が設けられています。たとえば、大気や水に関して地域の環境基準が設定されていますし、産業活動に従事する人の健康を保護するために、職場環境レベルに関する許容濃度が制定されています。
しかし、十分とはいえません。その証拠に、環境ホルモンによる内分泌攪乱や環境汚染物質による化学物質過敏症(かがくぶっしつかびんしょう)など、これまで知られていなかった問題も提起されています。
環境から、どんな健康被害を受ける可能性があるかを知っておきましょう。そして、個人でできることがあれば、予防策を講じましょう。
個人の力では予防できないこともありますから、定期的な健康診断などを受け、健康障害が見つかったら、早期に治療する用心深さもたいせつです。