イタイイタイ病(読み)イタイイタイビョウ

デジタル大辞泉 「イタイイタイ病」の意味・読み・例文・類語

いたいいたい‐びょう〔‐ビヤウ〕【イタイイタイ病】

富山県神通川流域で発生した慢性カドミウム中毒。大正から昭和20年代にかけて多発。骨が冒され、痛みが激しく骨折しやすい。鉱山廃水が原因であることが解明され、昭和43年(1968)公害病に認定。

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共同通信ニュース用語解説 「イタイイタイ病」の解説

イタイイタイ病

富山県を流れる神通川流域で発生した。上流にある岐阜県飛騨市の三井金属神岡鉱山から、重金属カドミウムが流出。汚染された水を飲んだり、コメを食べたりして、腎臓障害や骨軟化症を起こした。重症になるとくしゃみで骨折するほど骨がもろくなり、患者が「痛い、痛い」と叫んだのが病名の由来。1967年に富山県による患者認定が始まり、2013年12月17日、三井金属と被害者団体が「全面解決」に合意した。

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改訂新版 世界大百科事典 「イタイイタイ病」の意味・わかりやすい解説

イタイイタイ病 (いたいいたいびょう)

富山県神通川流域の農村地区で,第2次世界大戦後の数年間を中心に,主として更年期以降の経産婦がかかったといわれる骨軟化症様の病気。全身の激痛を訴えることから,この病名が通称として用いられるようになった。1955年に河野稔らがこの病気を初めて学会に報告し,68年にはこの病気を神通川上流の三井金属鉱業神岡鉱業所より排出されたカドミウムCdに起因する公害病と認めた厚生省見解が発表された。

腰痛,下肢筋肉痛などで始まり,股(こ)関節の開排制限,アヒル様歩行などを示す。これらの症状は徐々に進行し,数年後にはねんざなどを契機に歩行障害を起こす。臥床(がしよう)によって症状は急速に進展し,わずかの体動や咳だけでも多発性の病的骨折を起こしてイタイイタイを連発,全身衰弱により死亡する。ただし,1960年ごろ以降はこのような激しい症状の患者は見られない。

骨のX線像では,高度の骨萎縮と脱灰像(頭蓋(とうがい)骨を除く),骨の湾曲,病的骨折による骨格変形,骨改変層などが認められる。尿所見も特徴的で,比較的多尿であり,タンパク(とくに低分子量のタンパク)と糖はほとんど全例に検出されるが,その量は多くない。尿中アミノ酸カルシウムおよびカドミウムの排出は増加する。血液では,血清カルシウムは正常であるが,血清無機リンの低下とアルカリフォスファターゼの上昇が見られる。空腹時血糖,糖負荷試験は正常。腎機能は,濃縮試験,腎クリアランス試験レノグラムなどから見て低下しているが,血中残余窒素が上昇しないことから,糸球体のろ過機能はあまり侵されておらず,尿細管機能障害が主と考えられる。最大血圧は低値を示す。

骨は軟化と萎縮が著明で,組織学的には骨の多孔化のほかに類骨の増生が認められ,骨軟化症あるいはこれに類似の所見を示している。腎臓は糸球体に著明な変化がなく,尿細管の萎縮性変化が著しい。また,間質のびまん性繊維化,巣状の円形細胞浸潤が認められる。

ビタミンDの大量投与療法や高タンパク食療法などによって症状が改善される。

この病気について,本格的な疫学調査が開始された63年以前の患者数は不明であるが,100名(女子のみ)近い死亡者があったともいわれている。1982年3月末時点での把握患者数(後述の〈公害健康被害補償法〉による認定患者数)は107名(うち70名は死亡),要観察者数(富山県の指定による)は383名(うち319名は死亡または指定解除)で,発病時期はいずれも20~30年以前,神通川流域のカドミウム汚染地区とほぼ一致して発生しており,大部分の者の現地居住期間は30年以上である。また,患者の多くは頻回の経産婦で,遺伝関係は認められていない。患者発生地区では,一般住民の男女とも尿のタンパクと糖が高率に証明されている。なお,富山県では明治の終りから大正の初めにかけて骨軟化症が全県的に多発していたことは有名で,このときの患者の年齢ピークは10歳台,そのほとんどが女子であった。イタイイタイ病はこれより約40年後に,年齢も約40歳遅れた50歳台をピークとしてやはり女子を中心に発生したわけで,本病の骨所見については,昔,潜在的にあった骨軟化症がこの地区独特の要因の働きで再発したと考えることもできる。

この病気の発生は神通川流域の一定地区に限られており,患者の多発地区ほどそこの産米中カドミウム濃度が高いこと,患者の尿中重金属濃度が,鉛,亜鉛では対照とした健康者との間に差が見られないのに,カドミウムでは高濃度となっていること,また剖検例では臓器中のカドミウムが高濃度で,かなりの量のカドミウムが体内に蓄積していると考えられること,カドミウム経口投与の動物実験ではこの病気の再現に成功していないが,特定の条件下(例えば低カルシウム,低タンパクの餌で飼育)では腎尿細管の病変と骨の脱灰像が認められ,これは雄よりも雌に強いことなどから,この病気の発生にはカドミウムの過剰摂取が関係していると考えられた。ただし,病理発生学的に見た発病機序には,なお不明の点が多く,とくに腎臓変化と骨変化の関係については今後解明を必要とする点が少なくない。神通川を汚染したカドミウムの由来としては,上流の三井金属鉱業神岡鉱業所の事業活動に伴って排出されたものが大部分と結論されている。

 なお,その後の調査でカドミウム汚染地は全国の各地で発見されており,神通川流域と同程度に汚染されているところもあるが,骨軟化症の多発はいずれの汚染地でも認められていない。ただし,腎所見は共通しており,したがってイタイイタイ病の骨変化については,前述した昔の潜在性骨軟化症がカドミウムにより顕在化したとすれば,この病気が神通川流域のみに多発した理由が説明しやすくなるが,動物実験などによってもこの点はまだ確認されていない。

68年から富山県は国の補助を得て患者の医療救済措置を講じてきたが,69年12月に制定された〈公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法〉に基づいて,70年2月以降医療費,医療手当,介護手当が支給された。本法は,73年より〈公害健康被害補償法〉に引き継がれた。

 一方,本病患者はカドミウムの汚染源とされた三井金属鉱業に対して被害の補償を求める民事訴訟を1968年に提起した。結果は原告(患者側)の勝訴に終わり,73年に患者側と会社側との間で妥結し補償協定によって,73年度以降の医療費などは会社側から支払われることになった。また,1972年度までに前記の特別措置法によって支給された医療費などについても,会社側から返還された。
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六訂版 家庭医学大全科 「イタイイタイ病」の解説

イタイイタイ病
イタイイタイびょう
Itai-itai disease
(中毒と環境因子による病気)

どんな病気か

 富山県神通川流域、熊野地域住民の更年期以降の出産経験のある女性に多くみられた全身の痛みを主訴とする原因不明の奇病について、萩野昇らが1955(昭和30)年10月に初めて報告し、その存在が広く知られるようになりました。

 その後の研究の結果、1968(昭和43)年5月に厚生省(当時)は、「イタイイタイ病はカドミウムの慢性中毒により、まず腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症(こつなんかしょう)を来し、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となって生じたもので、慢性中毒の原因物質としてのカドミウムは、三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所の排水以外には見当たらない」とする見解を発表しています。

 その後1971(昭和46)年2月からは「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」が施行され、医療等の救済が行われてきました。1974(昭和49)年9月からは「公害健康被害補償法」による医療救済等の措置が実施されています。

 これらの法によるイタイイタイ病の認定患者は2009年3月までに195名となっています。

原因は何か

 慢性カドミウム中毒とされています。食べ物や水を介して摂取されたカドミウムによりリンやカルシウムの代謝異常を伴う腎尿細管(じんにょうさいかん)機能異常(ファンコーニ症候群)が生じ、骨軟化症および骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を引き起こして、そこに妊娠、出産、低栄養などの誘発因子が加わることで本症が発生すると考えられています。

 神通川上流の三井金属鉱業神岡鉱業所から排出された廃水に含まれていたカドミウムによって汚染された飲料水や農作物を摂取することで、慢性カドミウム中毒になることが原因と考えられています。1955年以後は重症者はほとんどみられなくなり、近年、本症の新たな発症は認められていません。

 本病の原因物質としてカドミウムが最も強く疑われていますが、カドミウムの単独原因説には無理があり、低蛋白、低カルシウムなどの栄養上の障害も原因のひとつと考えられています。なお、動物実験での再現が困難なことから真の原因は解明されていません。

症状の現れ方

 腎臓の尿細管の再吸収障害と、骨の軟化症および粗鬆症の合併的変化がその主な病変とされています。主症状は疼痛で、腰痛や下肢の筋肉痛などで始まり、次第に各部に広がって、ひどくなれば、わずかに体を動かしたり(せき)をするだけでも激しい痛みを訴えるようになります。

 経過はきわめてゆっくりであり、捻挫(ねんざ)などの軽い外傷を契機に歩行障害を起こし、アヒルのような歩行から末期には歩行不能になり、寝たきりになります。わずかな外力で病的骨折を起こし、全身に多数の骨折のあった例もかつてはみられました。

 腎尿細管障害は、尿中のβ2­ミクログロブリンなどの低分子蛋白、糖、蛋白、アミノ酸の排泄が増えるのが特徴です。

治療の方法

 骨病変についてはビタミンD2の大量投与や活性型ビタミンD3による治療がおおむね奏効するため、悪化を繰り返す症例はあるものの、長期的には軽快する傾向があります。

松井 寿夫

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イタイイタイ病」の意味・わかりやすい解説

イタイイタイ病
いたいいたいびょう

富山平野の中央を貫く神通(じんづう)川両岸の一定地域に居住する40歳以上の農村女性、とくに多産婦に多発した疾病。初めは風土病と考えられていたが、1955年(昭和30)に発見者である地元の開業医萩野昇(はぎののぼる)(1915―1990)と、協力者である東京の整形外科医河野稔(こうのみのる)によって初めて学会に共同発表されてから約10年後、カドミウムの体内蓄積が発病の基盤になっていることが明らかにされ、日本の代表的な公害病として知られるようになった。

 症状は腰痛、背痛から始まり、しだいに股関節(こかんせつ)の痛みのため臀部(でんぶ)を振ってアヒルのような歩き方をするようになり、やがて歩行不能となる。また、ぶつかったり転んでも容易に四肢骨や肋骨(ろっこつ)に骨折をおこし、たび重なるとタコの足のように四肢が屈曲してしまう。体位を変えたり、談笑や咳(せき)などによっても全身に痛みがくるようになると、昼夜を問わず「いたい、いたい」と訴え続け、ついには栄養失調やその他の合併症で死亡する。なお、骨の変化のほかに腎臓(じんぞう)の尿細管の機能も冒され、尿中にタンパク、糖、カルシウムが増加する。骨折しやすい理由の一つにカルシウムの体外排出が考えられ、多産婦に多発したのも、妊娠中にカルシウムが胎児に多く奪われることが誘因とみられている。

 原因としては、患者の尿中にカドミウム量が異常に多いこと、神通川流域の水田土壌中のカドミウム量が他の河川流域に比べて明らかに高いこと、発生が神通川流域の一定地域に限られており、それが水田中のカドミウム濃度とよく一致すること、患者の発生地区では骨症状を呈していないが尿にタンパクや糖が出ている者が高率にみいだされており、これが産業現場でみられるカドミウム中毒の症状と一致することなどから、カドミウムがイタイイタイ病の基盤にあることが明白になった。その汚染源が、神通川上流の神岡にある亜鉛・鉛鉱山(三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所。現、神岡鉱業。2001年採掘中止)からの廃水であることも突き止められた。すなわち、廃水中のカドミウムが川や土地を汚染し、飲料水や米に混入して人体内に入り、発病まで20~30年間にわたってカドミウムが体内に蓄積されるわけである。しかし、発病にはカドミウムのほかに、栄養、労働、生活その他の環境条件が加わったと考えるのが妥当であろう。

 患者数については、1969年(昭和44)制定の「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」およびこれを引き継いだ1973年制定の「公害健康被害補償法」によって認定された患者数は201人(うち死亡者199人)となっている(2022年12月末現在)。それ以前の患者については実態がよく把握されておらず、第二次世界大戦後よりこの時期までに女性のみで100人近い死亡者が出たものと推定されている。

[重田定義]

『萩野昇著『イタイイタイ病との闘い』(1968・朝日新聞社)』『吉岡金市著『イタイイタイ病研究』(1970・たたら書房)』『イタイイタイ病訴訟弁護団編『イタイイタイ病裁判1~6』(1971~1974・総合図書)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イタイイタイ病」の意味・わかりやすい解説

イタイイタイ病
イタイイタイびょう

1956~57年頃をピークにして富山県,神通川流域に発生した公害病。激痛や病的骨折に襲われて運動不能状態となり,さらに進行すると死にいたる。特に中年の多産婦に多くみられた。 1967年岡山大学教授の小林純は地元の医師萩野昇との共同調査の結果として,三井金属鉱業神岡鉱業所の廃水によるカドミウムの慢性中毒症と発表。次いで 1968年5月厚生省も同一見解を発表し,公害病として認定された。ただし,カドミウム単独中毒説は疑問視されている。被害者中 31人は 1968年1月三井金属鉱業を相手に損害賠償請求の訴えを起こし,1971年富山地裁は三井側に 5700万円の支払いを命じた。また,1972年8月の第1次控訴審でも患者側が勝訴し,訴訟は事実上終結した。なお,この裁判は四日市喘息,新潟水俣病 (→阿賀野川水銀事件 ) ,熊本水俣病の裁判とともに四大公害裁判といわれ,ことに四日市公害訴訟とイタイイタイ病訴訟の判決は,公害裁判上画期的なものであり,その後のこの種の裁判に大きな影響を与えた。

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百科事典マイペディア 「イタイイタイ病」の意味・わかりやすい解説

イタイイタイ病【イタイイタイびょう】

富山県神通川流域の農村に,頻回(ひんかい)経産婦に多く見られた骨軟化症様の病気。わずかな刺激で病的骨折が起こり,日夜苦痛を訴える。カドミウムの慢性中毒による腎障害から骨軟化症をきたし,これに妊娠,授乳,老化,内分泌の変調などによるカルシウム不足が加わって起こると考えられる。1955年,河野稔らがカドミウム原因説を学会に報告,1968年,厚生省は,三井金属鉱業神岡鉱業所(現・神岡鉱業)の排水中にカドミウムが含まれ,これによって汚染された農産物,魚類,飲用水を摂取したことを原因とする公害病との見解を発表。イタイイタイ病の認定患者は2011年末現在で196人,そのうち現存患者は4人。
→関連項目公害裁判公害病神通川四大公害訴訟

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知恵蔵 「イタイイタイ病」の解説

イタイイタイ病

岐阜県神岡町(現・飛騨市)の神岡鉱山から排出されたカドミウムが神通川に流れ、川水を灌漑用水に使用していた富山県の農地土壌が汚染された。そこで産出された米を長年摂取した中高年の女性多数が、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を伴う骨軟化症を発症。患者が「いたい、いたい」と骨の痛みを訴えて死ぬことから地元の萩野昇医師が「イタイイタイ病」と名付けた。汚染米から多量に摂取したカドミウムが腎臓皮質に蓄積されると、尿中のたんぱく質、糖分、カルシウム、リンなどの栄養分を再吸収する尿細管が障害を起こす「カドミウム腎症」になる。そして骨の成分であるカルシウムやリンが尿中に流出して欠乏するため骨がもろくなる。大正時代に発生し、罹患者は1000人以上と推定されるが、発見は1955年。68年に日本の公害病第1号に認定された。2007年7月現在の認定患者は191人(うち生存者4人)、要観察者は335人(うち生存者2人)だが、現在でも新規患者の認定が続いている。イタイイタイ病患者は、石川県梯川(かけはしがわ)流域、兵庫県市川流域、長崎県対馬でも発見されているが、国は認定していない。カドミウム腎症は、全国各地の鉱山・精錬所周辺で発見されているが、公害病として認定されていない。近年、韓国や中国の鉱山・精錬所周辺でイタイイタイ病やカドミウム腎症の発見が報じられている。

(畑明郎 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 / 2008年)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「イタイイタイ病」の解説

イタイイタイ病
イタイイタイびょう

三井金属鉱業神岡(かみおか)鉱業所(岐阜県飛騨市神岡町)の廃水中のカドミウムが原因で,富山県の神通川流域住民に発生した腎臓障害や多発性の骨軟化症などの病気。大正初期から奇病とされていたが,1957年(昭和32)地元の萩野昇医師がカドミウム原因説を発表。68年3月患者は鉱業法により三井金属に損害賠償を求めて提訴。同年5月厚生省は公害病と認定。71年6月富山地裁で原告勝訴の判決が下された。2011年(平成23)末までの認定患者は196人(生存者4人),要観察者336人。

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旺文社日本史事典 三訂版 「イタイイタイ病」の解説

イタイイタイ病
イタイイタイびょう

三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所の廃水中のカドミウムが原因で,富山平野を貫く神通川流域住民に発生した骨の軟化や骨折,腎臓障害をおこす公害病
からだに痛みがおこり,ついには栄養失調やその他の合併症で死亡する。1968年厚生省は公害病と認定した。

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栄養・生化学辞典 「イタイイタイ病」の解説

イタイイタイ病

 富山県神通川中流域に多発した病気で,カドミウムの慢性毒性が主因とされる.

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世界大百科事典(旧版)内のイタイイタイ病の言及

【カドミウム】より

…作業者の健康障害を予防するため,作業場内の空気についてカドミウムの許容濃度は0.05mg/m3と定められている。一方,鉱滓や製錬所から排出されたカドミウムが周辺地域の環境を汚染する事例も多く,岐阜県神岡鉱業所から流出したカドミウムが主要な原因となって,神通川流域の住民にイタイイタイ病が多発したことはよく知られている。このことが契機となって,カドミウムによる環境汚染を防止するための規制措置がとられるようになり,工場および事業場から大気中に放出されるカドミウムの排出基準は1mg/m3,人の健康を保護するための水質汚濁に係るカドミウムの環境基準は0.01mg/l以下と定められている。…

【公害】より

…足尾,別子,日立,小坂の鉱山・製錬所の公害事件や,硫酸工場の煙害に対して農民が訴訟を起こした大阪アルカリ公害裁判が有名である。足尾鉱山の足尾鉱毒事件は,銅製錬後の鉱滓が洪水のたびに大量に流出し,下流の農民の健康や農作物に被害を与えた事件で,のちのイタイイタイ病事件と同じ性格のものである。古河財閥と政府は,被害農民の反対運動を権力によって弾圧した。…

【鉱害】より

…石炭鉱業による鉱害のほか,戦時体制下では,36年11月20日の尾去沢鉱山での廃滓ダムの決壊や,43年9月10日の岩美鉱山における同様の事件など大規模な災害も発生している。
[第2次大戦後の鉱害問題]
 第2次大戦の後に鉱害問題を大きくクローズアップさせたのは,イタイイタイ病である。この病気は神通川下流域の富山県婦中町を中心に1945年以降に多発し,63年以前は不詳であるが,イタイイタイ病による死者は200名以上にのぼるともみられている。…

【公害病】より


[〈公害健康被害補償法〉の制定]
 1959年に石油コンビナートが操業を始めた四日市で,その直後から健康被害の苦情が多発しはじめ,64年度の厚生省によるばい(煤)煙影響調査の結果,四日市の喘息(ぜんそく)様の呼吸器疾患の多発は大気汚染によるものであるという発表がなされ,これを受けて四日市市が公害病としての独自の医療扶助制度を開始したことが一つの契機となって,公害病という用語が社会的に広がり,定着してきたものである。ひきつづき1960年代の後半には,四大公害裁判といわれる四日市公害,熊本および新潟水俣病,富山イタイイタイ病の裁判が始められ,71年新潟水俣病,72年四日市およびイタイイタイ病,73年熊本水俣病と,すべて健康被害を受けた原告側の勝訴の結果となり,ここに公害病の概念の原型が社会的通念として広がってきた。1969年には公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法が成立して,医療費,医療手当,介護手当の支給を内容とする制度が動き出し,74年には〈公害健康被害補償法〉が施行されて,医療費のみならず,障害の程度,年齢に応じての障害補償費,遺族補償,療養手当などの支給の制度ができた。…

【土壌汚染】より

…日本における土壌汚染の歴史は古く,明治初期に足尾銅山の銅などを含有する排水が渡良瀬川流域の農地を汚染し,農作物などの被害が発生していた(足尾鉱毒事件)。しかし,土壌汚染が公害の一種であると法律で規定されるようになったのは,1968年に,厚生省が〈富山県の神通川流域に発生しているイタイイタイ病は,同河川の上流にある三井金属鉱業の神岡鉱山から排出されたカドミウムが水田土壌を汚染し,そこで生産された米を長期間にわたり摂取したことが主原因である〉との見解を発表した後である。すなわち,70年に開催されたいわゆる公害国会で公害対策基本法が改正された際に,典型公害の一種として土壌汚染が追加され,同時にその実施法として〈農用地の土壌の汚染防止等に関する法律〉(以下〈土壌汚染防止法〉と記す)が制定された。…

※「イタイイタイ病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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