あたかも生きた人間のように見える等身大の人形。または,一つのテーマのもとに何体もの人形を作って展示する見世物を指す。熊本の仏師安本善蔵の子亀八(やすもとかめはち)(1826-1900)と,門弟の松本喜三郎(1825-91)が著名。亀八の生人形製作は大坂が最初という。1860年(万延1)に熊本で見せた《浮世四十七癖》は,75年に中国,上海へ買われて行く。のちの《東海道五十三駅(つぎ)》や《西南戦争》も名高い。一方の松本は,1854年(安政1)に大坂で〈異国人物〉を見せ,翌年から江戸で活躍する。精巧をきわめたその人形に,江戸っ子は〈生人形〉の名をつけたといわれる。71年(明治4),浅草奥山に飾った《西国三拾三所観音霊験記》は4年越しの大当り。西日本の各地でも展示され,人形浄瑠璃《壺坂》の原拠となった。この2人を目標に各地から生人形師が輩出して姸を競ったので,明治初期にはすぐれた作品が数多く現れ,見世物の一大主流をなした。
→蠟人形
執筆者:倉田 喜弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…菊人形もその一つである。(f)この見世物の人形に,幕末のころ,本物の人間そっくりにこしらえた人形が現れ,〈生(いき)人形〉と呼ばれて評判をとった。この生人形系統の人形は,のちに西洋系統のマネキンの進出するにいたるまで,デパートのマネキンに用いられた。…
※「生人形」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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