知恵蔵 「生産緑地問題」の解説
生産緑地問題
生産緑地法は、大都市の住宅不足を背景に、「農林漁業との調整を図りつつ、良好な都市環境の形成に資すること」を目的に1974年に制定された。これに伴い、三大都市圏を中心とする市街化区域の「生産緑地」には、宅地並みの固定資産税が課され、多くが宅地に転用された。しかしその後、バブルによる地価の高騰や緑地の減少などが問題視されるようになったため、92年度から市街化区域内の農地は「宅地などに転用される農地」と「保全される農地」とに分けられることになった。所有者の申請によって保全の対象となる「生産緑地」は500平方メートル以上の緑地で、指定されると税制上の優遇措置を受けられるが、所有者には営農を30年間続けることが義務づけられた。
2016年末時点、全国の「生産緑地」は約1万3300ヘクタール(東京ドーム約2800個分)で、このうち約8割が22年に指定の解除期限を迎える。緑地の所有者は市町村に買い取りを請求できるが、財政難にある自治体が応じることは難しい。その結果、宅地並みになった高額な税負担に耐えられない所有者が不動産市場に緑地を売り払い、土地や住宅の需給バランスが崩れることなどが心配されている。また、都市部の緑地の減少は、防災・減災や自然保全の面からも好ましくない。こうした「生産緑地2022年問題」を前に、17年4月に関連法が改正され、小規模農家も申請できるように面積制限が300平方メートルに引き下げられた。また、指定期限を10年間ごとに再申請・延長すること、緑地内に直売所やレストランなどを設置することなども認められるようになった。
(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報