五島列島(読み)ゴトウレットウ

デジタル大辞泉 「五島列島」の意味・読み・例文・類語

ごとう‐れっとう〔ゴタウレツタウ〕【五島列島】

長崎県西部、東シナ海上にある列島。福江島・久賀島・奈留島・若松島・中通なかどおり島など約140の島からなり、リアス式海岸が発達。漁業が盛ん。

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精選版 日本国語大辞典 「五島列島」の意味・読み・例文・類語

ごとう‐れっとうゴタウレッタウ【五島列島】

  1. 長崎県西部、東シナ海にある列島。福江島および久賀(ひさか)島・奈留島・若松島・中通(なかどおり)島の五つのおもな島と約二〇〇の属島が約八〇キロメートルにわたってひろがる。奈留島以北を上五島、久賀島以南を下五島と呼ぶ。沿岸・沖合漁業の基地。リアス式海岸・ホマーテなど自然景観に富み、キリシタン遺跡・倭寇に関する史跡も多い。西海国立公園に属する。五島。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五島列島」の意味・わかりやすい解説

五島列島
ごとうれっとう

長崎県西部、東シナ海に浮かぶ島嶼(とうしょ)群。北東から南西方向に並ぶ中通島(なかどおりじま)、若松島(わかまつじま)、奈留島(なるしま)、久賀島(ひさかじま)、福江島(ふくえじま)の五つの主島と約200の属島からなる。総延長約80キロメートル、面積637.78平方キロメートル。行政的には五島市と南松浦(みなみまつうら)郡新上五島町(しんかみごとうちょう)を形成。古くは、平戸島(ひらどしま)とともに値嘉郷(ちかのさと)とよばれ、大陸にもっとも近いので、遣唐使の寄港や倭寇(わこう)の根拠地となるなど、対外関係上重要な位置を占め、その遺跡も多い。中世は宇久(うく)氏の支配下にあり、江戸時代は小値賀島(おぢかじま)が平戸藩に属するほかは大部分が五島藩(福江藩)に属した。明治以後は全域にわたって要塞(ようさい)地帯に指定されたが、第二次世界大戦後解消され、1955年(昭和30)列島の各地が西海国立公園(さいかいこくりつこうえん)に指定されている。1959年の総理府告示では、北松浦郡に属する宇久島、小値賀島、野崎島などを平戸諸島に加え、前述の五つの主島とその属島を五島列島とよぶことにしている。人口6万2696(2010)。

[石井泰義]

自然

列島は北東―南西方向の一つの地塁山地であったが、沈降によって五つの島に分かれ、各島間に若松、滝ヶ原(滝河原(たきごはら))、奈留、田ノ浦の瀬戸を生じ、また玉之浦湾(たまのうらわん)などの著しい溺れ谷(おぼれだに)を生じている。海岸には海食崖(がい)が発達、嵯峨ノ島(さがのしま)の断崖は130メートル、大瀬崎(おおせざき)では100メートルの断崖が延々と続いている。地塁山地の東側には鬼岳(おんだけ)火山(315メートル)、只狩山(ただかりやま)火山、西側には京ノ岳(きょうのたけ)(183メートル)、嵯峨ノ島の男岳(おだけ)、女岳(めだけ)などを噴出している。これらが海洋とともに特殊な自然景観を展開している。

[石井泰義]

産業

江戸時代には、農民が地方(じかた)、浜方、竈方(かまかた)百姓の三つの職域に分化され、地方は農業、浜方は漁業、竈方は製塩、製炭を主とした歴史を背景に、だいたい、奈留島以北では主漁副農、久賀島以南では主農副漁となっている。対馬(つしま)暖流に洗われる沿岸は豊富な魚族に恵まれ、五島藩時代、一時は捕鯨の一大中心地でもあった。現在はアジ、サバ、イワシの揚繰網(あぐりあみ)(巻網の一種)を軸として、ブリの定置網やイカの一本釣りのほか、ハマチ、エビ、タイ、真珠などの養殖が盛んである。五島するめの特産もある。また、男女(だんじょ)群島近海ではサンゴ採取が行われる。農業は段々畑でのサツマイモ作が主で、有畜農家が多く五島牛の特産がある。福江島では葉タバコの栽培が盛ん。

[石井泰義]

集落の特色

江戸時代以来のキリシタン集落が多く、各地に天主堂、教会がみられる。「チャンココ」や「オーモンデー」といった念仏踊などの無形民俗文化財を継承する農漁村が多いが、一般的には生産性は低い。姫島(ひめしま)、折島(おりしま)、葛島(かずらしま)などの属島では激しい人口流出に伴う集落の消滅(無人島化)がみられる(列島全体で、1965年から20年間に人口3万7867の減少)。おもな観光地には鬼岳、鐙瀬(あぶんぜ)溶岩海岸、大瀬崎断崖、荒川温泉、若松海域公園、赤岳断崖のほか、五島最古の歴史をもつ堂崎教会(どうざききょうかい)や石田城跡などがある。

[石井泰義]

〔世界遺産の登録〕野崎島の集落跡、頭ヶ島(かしらがしま)の集落、久賀島の集落、奈留島の江上集落(江上天主堂とその周辺)は、2018年(平成30)、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「長崎と天草(あまくさ)地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として、世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。

[編集部 2018年9月19日]

交通

福岡・長崎両空港から福江空港への定期空路がある。長崎港から奈良尾(ならお)港、福江港へはジェットフォイルが就航し、五島各地へはフェリーボートが、佐世保(させぼ)港から有川(ありかわ)港には高速船とフェリーが運航される。ほかに博多(はかた)港から平戸経由で五島各地を経て福江港に至る定期船がある。

[石井泰義]

『『五島列島―九十九島―平戸島学術調査書』(1952・長崎県)』『長崎県生物学会編『五島の生物』(1981・長崎出版文化協会)』


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日本歴史地名大系 「五島列島」の解説

五島列島
ごとうれつとう

長崎県の西部にある列島。平戸島より南西方に連なる島々は一四一を数え、面積六三六平方キロで、常住島は三〇にとどまる。中通なかどおり(面積一六八・三二二平方キロ)若松わかまつ(三一・五四二平方キロ)奈留なる(二三・八九五平方キロ)久賀ひさか(三八・三四五平方キロ)福江ふくえ(三二〇・八二平方キロ)の五大島が連なり、中通島の北に小値賀おぢか(一二・九七平方キロ)宇久うく(二四・八九平方キロ)があり(この二島は行政上は平戸諸島)、東方にひら島・ノ島、南西に男女だんじよ群島がある。西海さいかい国立公園のうちで、五島灘は長崎半島・西彼杵にしそのぎ半島・おお島・江ノ島・平島および五島列島によって囲まれた海域。奈留島より北を上五島、南を下五島と称し、五島支庁の管轄のもと福江市と南松浦みなみまつうら有川ありかわ町・上五島町・岐宿きしく町・新魚目しんうおのめ町・玉之浦たまのうら町・富江とみえ町・奈良尾ならお町・奈留町・三井楽みいらく町・若松わかまつ町がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「五島列島」の意味・わかりやすい解説

五島列島 (ごとうれっとう)

長崎県に属し,長崎市西方の東シナ海にある列島。北東から南西方向に約140の大小の島が並ぶ。総面積約690km2。行政上は,自然地理的な五島列島の範囲をとって福江市と南松浦郡の10町,北松浦郡の宇久(うく),小値賀(おぢか)の2町が含まれていた。2004年合併により南半部が五島市,宇久町と小値賀町を除く北半部が南松浦郡新上五島町となり,2006年宇久町は合併により佐世保市の一部となる。人口は1955年以降,減少の一途をたどり,姫島,折島など無人となった島もある。列島の胴体部は地塁山地で,その後の沈水により多くの瀬戸や湾入を生じ,美しいリアス海岸をみせる。地塁山地の東側には福江島の鬼岳(おんだけ)火山(315m)や富江溶岩台地が,西側には宇久島,小値賀島などの火山島や,京ノ岳火山(福江島北西端,178m)が形成されている。列島は日本の西端にあり,中国大陸に近く,かつて遣唐使の寄港地や倭寇(わこう)の根拠地となり,その遺跡は多い。中世は全域が五島藩の祖,宇久氏の支配下にあったが,近世には小値賀島のみが平戸藩に属することになり,宇久,中通(なかどおり),若松,奈留(なる),福江の各島を五島とした。明治になると,宇久,小値賀の両島が北松浦郡に編入されたので,中通,若松,奈留,久賀(ひさか),福江の各島で五島と称するに至った。しかし自然地理的には宇久・小値賀両島を含めて五島列島と考えてよく,また県南部の中心地長崎市の勢力圏が中通島の旧奈良尾町以南に広がり,県北の佐世保市の勢力圏が中通島の旧有川町以北,小値賀町と旧宇久町におよぶことから,前者の地域を下五島,後者の地域を上五島とし,合わせて五島列島とするのが妥当であろう。

 平地に乏しい五島列島の産業は漁業が中心である。江戸時代,紀州など漁業先進地から進出した漁民とその子孫が,近海捕鯨業や機船底引網漁業を発達させた。南西方の男女群島にかけて採取できるサンゴは,福江島の旧富江町を繁栄させた。第2次大戦後はイワシ揚繰網(あぐりあみ)漁業を経て,東シナ海を漁場とするアジ,サバの巻網漁業へ発展した。若松島などの入江では,タイ,ハマチ,真珠の養殖が行われる。農業は福江島,小値賀島,宇久島を中心に,五島牛として知られる肉用牛や豚の飼養,そして基幹作物であったサツマイモに代わる葉タバコやハウス野菜の栽培が盛んである。

 長崎港を起点に,福江,奈留,奈良尾の各港を循環する下五島航路と,佐世保港から有川,榎津(中通島),小値賀,平(宇久島)の各港を巡る上五島航路があり,いずれもフェリーが,また奈良尾,福江の各港には長崎からジェットフォイルが就航する。1976年開港の福江空港へは長崎・福岡両空港からそれぞれ航空路がのびる(81年開港の上五島空港(中通島)および85年開港の小値賀空港は2006年3月閉鎖された)。本土との交通が便利になるとともに観光客が増加している。特徴ある自然景観としては,福江島の砕屑丘(さいせつきゆう)群,溶岩トンネル,楯状火山などの火山地形,大瀬崎(福江島南西端)や嵯峨ノ島の海食崖,そしてオニヘゴ,リュウビンタイ(以上シダ類),アコウなどの亜熱帯植物があり,1955年西海国立公園に指定された。辺地の入江には小さな教会が見られ,自然景観にアクセントを与えている。南方風俗の盆供養の念仏踊が,チャンココ,オーモンデーなどと呼ばれて各地に残存する。
値嘉島(ちかのしま)
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五島列島」の意味・わかりやすい解説

五島列島
ごとうれっとう

長崎県西端の島嶼群。西は東シナ海,東は五島灘に面し,中通島若松島奈留島久賀島福江島および諸属島を総称して五島列島と呼ぶ。北東から南西に約 80kmにわたり,大小 140あまりの島々からなる。行政的には佐世保市小値賀町新上五島町五島市に属する。地質時代には東シナ海に突出する九州の大半島であった。福江島を除き主産業は漁業で,揚繰網一本釣り延縄定置網による漁業が行なわれ,中通島南部の奈良尾は揚繰網漁の最大の基地。福江島は古くからサツマイモの産地として知られたが,タバコ,ミカンの栽培や畜産も行なわれる。北東方の平戸島九十九島(くじゅうくしま)とともに西海国立公園に属し,特に若松島東岸の若松瀬戸,福江島南西岸の玉之浦が景勝地として名高い。遣唐使倭寇に関する遺跡が多い。江戸時代にカトリック信者が多数入植したことから,潜伏キリシタンの集落が点在し,野崎島の集落跡(小値賀町),頭ヶ島(かしらがしま)の集落(新上五島町),奈留島の江上集落,久賀島の集落(ともに五島市)は,2018年「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として世界遺産の文化遺産に登録された。上五島空港と福江空港があり,後者は長崎,福岡と結んでいる。面積 618.80km2(有人島のみ)。人口 8万1139(1995)。

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百科事典マイペディア 「五島列島」の意味・わかりやすい解説

五島列島【ごとうれっとう】

長崎県西部の東シナ海上に北東〜南西方向に連なる大小150余の列島。北から宇久島,小値賀(おじか)島,中通島,若松島,奈留島,久賀島,最大の福江島などの主要島があり,北松浦・南松浦2郡と五島市に属する。火山地形と溺れ谷海岸が顕著で,亜熱帯植物も生育。古代より遣隋使・遣唐使の航海の地として重視され,中世には倭寇の根拠地の一つとされる。宇久島の宇久氏が勢力をのばし,近世には五島氏として福江藩主となった。主産業は漁業で,県の漁獲量の大半を占め,五島牛,ツバキ油,するめ,サンゴなども特産。一部は西海国立公園に含まれる。長崎港,佐世保港などから定期船便,福岡,長崎から定期航空便がある。
→関連項目宇久[町]小値賀[町]岐宿[町]五島灘佐世保[市]値賀島長崎[県]奈留[町]福江藩若松[町]

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世界大百科事典(旧版)内の五島列島の言及

【島】より

…そして,源頼朝が鬼界ヶ島(薩南諸島)征伐をもって西国鎮撫の眼目とし,夷(えびす)島(北海道)管轄権に支えられて征夷大将軍と称したように,民族的な領土高権が諸島,とくに国境の島々の領有によって象徴されるという観念は,前近代を通じて存在した。五島列島浦部島(中通島)の西の境が,鎌倉時代の一文書で,〈うみ,こうらい(高麗)のと〉と表現されているように(《青方文書》),国の最果(さいはて)は当然のことながら島であった。そして,すでに《延喜式》巻十六の追儺祭文(ついなさいもん)(鬼やらいの呪詞)において,遠値嘉(とおつちか)(五島列島の西寄りの島々)や佐渡などの国境の島々が〈疫鬼(えやみのおに)〉の追われ籠る島として現れており,それは,国境の向こうには鬼がすむという中近世の国際意識の中に引き継がれていく。…

【値嘉島】より

…現在の五島列島を中心とした歴史地名。《和名抄》に,肥前国松浦郡値嘉郷とあるが,古くは知訶,血鹿とも表記した。…

※「五島列島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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