日本歴史地名大系 「田市」の解説 田市はすだし 面積:二七・二七平方キロ埼玉県の東部中央に位置し、北は南埼玉郡菖蒲(しようぶ)町・白岡(しらおか)町、東から南は岩槻市、南から西にかけて上尾市・北足立郡伊奈(いな)町・桶川市に接する。岩槻台地に続く蓮田台地と白岡台地の南部を占め、元荒川・綾瀬川・見沼代用水が北西部から南東部へと流れており、大部分は平坦な台地と両川のつくりだした低地からなる。市域の中央をほぼ南北に、岩槻から菖蒲町へ通じる国道一二二号が通る。〔原始・古代〕縄文時代の遺跡としては、綾瀬(あやせ)貝塚・黒浜(くろはま)貝塚・関山(せきやま)貝塚などがある。綾瀬貝塚は、縄文時代前期の海進期に元荒川流域で最奥の位置にある貝塚の一つである。黒浜貝塚は縄文時代前期前葉の黒浜式土器の標式遺跡である。関山貝塚も縄文時代前期の遺跡で、綾瀬川流域の海進状況を示し、関山式土器の標式遺跡となっている。古墳時代の遺跡は下閏戸(しもうるいど)地区に十三塚(じゆうさんづか)古墳があり、周辺の小塚六基とともに古墳群を形成している。〔中世〕市域は埼西(きさい)郡に属し、野与党の分布範囲であったと思われるが、同党武士の名前は確認できない。しかし、市域に隣接する白岡町域の台地には、鬼窪氏ら野与党の武士が居住したので、その勢力下にあったことが考えられる。さらに日(につ)川に面する白岡台地に江(え)ヶ崎(さき)城跡がある。ほぼ正方形の内郭をなし、鎌倉時代末期と考えられる陶器や曲物が出土した。また、近くの久伊豆(ひさいず)神社境内から正和三年(一三一四)銘の鰐口が出土しており、江ヶ崎城を居城とした人物との関連がうかがわれる。中世の城館跡の名残と考えられる「堀ノ内」の地名もいくつかみられる。 出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報