寺社で用いる金属製打楽器。金鼓(こんく)(金口)ともいう。鋳銅製が一般的だが,鋳鉄製のものもある。鉦鼓(しようこ)を二つ張り合わせた丸い〈もなかの皮〉のような形で,中央に撞座(つきざ)を設け,上方につり下げるための耳を両方に設け,下の半周分程度が大きく一文字状に開いている。その大きな口から鰐口と称したらしく,本堂や拝殿の長押(なげし)や梁(はり)にかけ,前につり下げた紐(鉦の緒という)で打ち鳴らす。各寺社に遺品が多く,最古の銘を有するのは長保3年(1001)銘,東京国立博物館蔵のものといわれる。
執筆者:広瀬 美都
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
神社や寺院の堂前、軒先に掛ける鳴らし物の一つで、金口(こんく)、金鼓(こんく)、打金(うちがね)などともいう。鉦鼓(しょうこ)を二つあわせた形に似ており、中は空洞で下方に鰐の口のような一文字の裂け目があり、前に垂らした綱で打ち鳴らす。表面には施入者名、年紀、鋳物師(いもじ)名などの銘文を刻する場合が多く、直径10センチメートルぐらいのものから1メートルを超えるものまで、さまざまな大きさのものがあるが、一般的には20~30センチメートルのものが多い。
[中尾良信]
…ゴングの名称はマレー語に由来するといわれるが,この種の楽器は東南アジア一帯と中国およびその周辺で広く用いられている。日本の鉦鼓,鉦盤,伏鉦(ふせがね),当り鉦(あたりがね),双盤はすべてゴングの一種で,また金鼓(こんく∥こんぐ)の別名をもつ鰐口(わにぐち)はゴングを最中(もなか)の皮のように二つ合わせた形状を呈している。実際にゴングに分類され得る体鳴楽器の形状は,浅い円盤状,深目の盆状,鉦鼓のごとく外側へ折り曲げられた縁をもつもの,中央に瘤状の突起をもつもの,さらに深く底の広い釜を伏せたような形(頂上に乳頭状の突起をもつ)などさまざまである。…
…第2の鋪設用祭具は祭場の神座をしつらえ,幣帛を包む薦(こも),食物をすえる麻簀(あさす),案・机の上下に敷物として用いる蓆(むしろ),畳,茵(しとね)などである。第3の装飾用祭具としては榊,注連(しめ),鈴(すず),鰐口(わにぐち)があげられている。榊は栄木(さかき)で常緑樹の総称であったが,後に一種の樹を特定して指すようになった。…
※「鰐口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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