出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
繊維状にほぐした魚肉を調味していり上げた食品。おもにタイ,ヒラメ,タラなど白身の魚を使い,蒸し,あるいはゆでてから肉をほぐし,しょうゆ,みりん,砂糖,塩などを加え,弱火でいりつけて作る。食紅で染めることもあり,ちらしずしの具などに用いられることが多い。室町時代から干しダイ,干しダラなどを火であぶって肉をほぐした〈ふくめ〉,あるいは〈ぼんぼり〉という料理があった。《祇園会御見物御成記》(1522)などを見ると将軍を迎えての饗膳(きようぜん)にも供されているものであるが,これが江戸時代に別系統の田夫(でんぶ)と呼ぶ料理と合体,変形して,現在のでんぶになったようである。田夫については間接的にではあるが,《料理網目調味抄》(1730)に記載がある。それは,こまかくした田作,昆布,辛皮(からかわ)(サンショウの樹皮),焼麩,ゴボウ,黒豆に古酒1升としょうゆ5合を加えてよく煮詰め,焼塩と砂糖でかげんを調え,でき上がりにケシの実をいってかけるというもので,その名を都春錦(としゆんきん)と呼んだ。いまもそれに近い振りかけ用食品があるが,その都春錦を簡略にしたものが田夫だというのである。ちなみに〈田麩〉という表記は《料理伊呂波庖丁(りようりいろはぼうちよう)》(1773)あたりから見られるようになる。
執筆者:松本 仲子+鈴木 晋一
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