田麩(読み)でんぶ

精選版 日本国語大辞典 「田麩」の意味・読み・例文・類語

でん‐ぶ【田麩】

〘名〙 鰹節(かつおぶし)粉末にしたものを酒と醤油でいり煮したもの。または、鯛・鱈(たら)などの魚肉をゆでてすり鉢ですったものを甘辛く調味していったものをいう。魚肉を干してから作ることもある。〔古今料理集(1670‐74頃)〕

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デジタル大辞泉 「田麩」の意味・読み・例文・類語

でん‐ぶ【田×麩】

タイなどの魚肉を細かくほぐし、砂糖・醤油・みりんなどで味つけし、った食品

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改訂新版 世界大百科事典 「田麩」の意味・わかりやすい解説

田麩 (でんぶ)

繊維状にほぐした魚肉を調味していり上げた食品。おもにタイ,ヒラメタラなど白身の魚を使い,蒸し,あるいはゆでてから肉をほぐし,しょうゆ,みりん,砂糖,塩などを加え,弱火でいりつけて作る。食紅で染めることもあり,ちらしずしの具などに用いられることが多い。室町時代から干しダイ,干しダラなどを火であぶって肉をほぐした〈ふくめ〉,あるいは〈ぼんぼり〉という料理があった。《祇園会御見物御成記》(1522)などを見ると将軍を迎えての饗膳きようぜん)にも供されているものであるが,これが江戸時代に別系統の田夫(でんぶ)と呼ぶ料理と合体,変形して,現在のでんぶになったようである。田夫については間接的にではあるが,《料理網目調味抄》(1730)に記載がある。それは,こまかくした田作,昆布,辛皮(からかわ)(サンショウ樹皮),焼麩,ゴボウ黒豆に古酒1升としょうゆ5合を加えてよく煮詰め,焼塩と砂糖でかげんを調え,でき上がりにケシの実をいってかけるというもので,その名を都春錦(としゆんきん)と呼んだ。いまもそれに近い振りかけ用食品があるが,その都春錦を簡略にしたものが田夫だというのである。ちなみに〈田麩〉という表記は《料理伊呂波庖丁(りようりいろはぼうちよう)》(1773)あたりから見られるようになる。
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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「田麩」の解説

でんぶ【田麩】

魚肉をゆでてすりつぶすか細かくほぐし、砂糖・しょうゆ・塩・みりんなどで味をつけ、いった料理。鯛・たら・かつお・えびなどを用いる。

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