日本大百科全書(ニッポニカ) 「発振回路」の意味・わかりやすい解説
発振回路
はっしんかいろ
oscillator circuit
電気的に繰り返し振動を発生する電子回路。発振をおこす方式によってLC発振回路、CR発振回路、水晶発振回路、使用するデバイスによってトランジスタ発振回路、電子管発振回路、磁電管・クライストロン発振回路ともよぶ。また発生する周波数に応じて低周波、高周波、マイクロ波発振回路ともよび、発生する波形に応じて正弦波、方形波、三角波、パルス発振回路などとも分類される。
発振周波数は回路の構成素子により異なる。コンデンサー(C)と抵抗(R)を用いるCR発振器は1000分の1~数メガヘルツの発振周波数が、インダクタンス(L)とコンデンサーを用いるLC発振器では1~数百メガヘルツ、磁電管によるものは100メガ~100ギガヘルツ、クライストロンによるものは数百メガ~数十ギガヘルツの発振が得られる。水晶発振器は安定性はよく数百ヘルツ~数百メガヘルツの発振が得られる。似た原理の磁歪(じわい)発振器では数百ヘルツ~数十キロヘルツである。
発振回路に使われる能動デバイスにより、負性抵抗素子を用いる内部帰還型と、トランジスタや電子管を用いた外部帰還型発振回路に分けられる。内部帰還型ではとくに正帰還の回路を用いず、外部回路で失われるエネルギーを負性抵抗で供給することになり、負性抵抗と外部回路の抵抗が一致した状態で発振が持続する。外部帰還型は、能動デバイスは増幅器として働き、その出力の一部を入力側に正帰還させ、外部回路で失われるエネルギーを増幅器で補うものであるが、増幅率と帰還率の積が1のときに発振し、増幅器が非線形のために発振電圧はある値に落ち着く。
LC発振回路はLC同調回路を用いたもので、帰還の方式によりハートレー型、コルピッツ型、コレクタ同調型、ベース同調型、エミッタ同調型などがあり、それぞれの特徴を生かして使用されている。水晶発振回路は、LC回路の共振の周波数の選択性の悪さを補うためのものである。水晶の切り出し型によって共振周波数の選択性と温度安定性のよいものが得られており、ピアースBE型、ピアースCB型、無調整型、ミーチャムブリッジ型などがあり、安定性のよさから周波数の二次標準としても使われている。CR発振回路は増幅器の出力の位相を180度回転して入力に戻すもので、CR移相器を使う移相発振器、ブリッジを用いるウィーンブリッジ発振器、能動デバイスを2個使用するスイッチング用のマルチバイブレーターがある。磁電管、クライストロン発振回路は、電子流と電波の相互作用を増幅に用い、共振回路には空胴共振器を用いている。
[岩田倫典]
『山本外史著『電子回路』(1980・朝倉書店)』