水晶振動子が安定な周波数の決定要素である発振器。周波数範囲は数キロヘルツから100メガヘルツの桁(けた)に及ぶ。トランジスタのエミッタ、コレクタ、ベースのどれを接地するかで、それぞれピアース回路、コルピッツ回路、クラップ回路とよばれる。スイッチングとか雑音などの電気ショックが圧電効果を経て振動子を励振すると、逆にこのたね振動は電気信号となって正帰還回路で増幅され、この繰り返しで振動は成長し、ループ利得が1になったところで、定振幅発振状態になる。ここで振動子は誘導性素子としてふるまい、発振回路に等価な負抵抗を伴うCL(キャパシタンス)と平衡して発振周波数を決める。高い周波数のオーバートーン(倍調波)発振の場合とか、予期しない発振がおこる場合には、コレクタ回路を所要周波数の同調回路にかえなくてはならない。発振周波数は振動子のそれよりわずかに高い。このような発振器の形式を並列共振型、または正リアクタンス型とよんで、振動子の直列共振点で発振する直列共振型と区別する。後者はオーバートーン発振器によく用いられる。
水晶発振器の周波数変動の原因には、振動子の周波数温度特性、電圧変化や機械衝撃などの環境変化、振動子と回路素子の老化、回路雑音などがあって、それぞれ異なる対策が必要となる。発振周波数分の周波数偏差を10-nの形で表したとき、総合的なこの数値は普通のパッケージ発振器で10-4~10-5、温度補償回路付きで10-6~10-7、恒温槽型で10-7~10-11の程度である。
水晶発振器の変り種には、信号電圧で発振周波数を変化させる電圧制御型とか、論理ゲートを使用したデジタル回路用のゲート発振器などがある。
[有賀正直]
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水晶は,圧力が加わると電圧が発生し,また電圧が加わるとひずみが生ずるという圧電変換作用をもち,機械振動子としてはきわめて安定な固有振動をする。したがって,適当に切り出した水晶片に極板をつけ,水晶片の種類,形状,大きさなどで決まる固有振動周波数の電圧を加えると安定な同調回路として動作する。水晶発振器は増幅器の帰還路に水晶振動子を入れた発振回路で,数kHzから数十MHzの周波数で10⁻6~10⁻10/℃の優れた温度特性の発振特性が得られる(図)。
各種の標準周波数源として用いられる。また,水晶時計として広く用いられており,月差±15秒以内というような安定度が得られ,腕時計用の集積回路を用いた発振回路は0.5μW程度の微小電力で動作し,電池1個で数年間使うことができる。
→圧電気
執筆者:柳沢 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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