磁電管ともいう。1921年アメリカのハルA.W.Hull(1880-1966)が発明,その後岡部金次郎により発展させられた。極超短波(UHF以上)を発振する電子管の一種。円筒二極真空管の軸方向に磁界をかけると,電子の運動方向は曲げられ,ある限界値以上では陽極に到達せず,ループを描いて陰極のまわりを周回し,電子の密度の濃い層(電子雲)を作る。陽極を偶数個(ふつう8~16個)に分割し,その外側に円または扇形の孔を設け,分割間隙の容量と孔のインダクタンスからなる共振器を構成する。周波数が高くなるとコイルなどの代りに金属壁でかこまれた空間を用いる。これを空胴共振器という。陽極間隙には交互に正負の電圧が生じ,これにより陰陽極間の電位分布は,陽極の直流電圧とこの間隙の交流電圧によるものとが重なりあい,同じ円状から変形し,突起が生ずる。しかもこれは,間隙交流電圧の周期に同期して周回する成分がある。陰極をとりまく電子雲は,この電界の影響を受け,陽極のほうに動くが,電子の周回速度と管内電界の周回速度が一致していると,陽極のほうに近づくに従い電子が減速される電界の中に集束され,スポーク状の集団となって陽極に到達する。電子は減速電界中で直流電圧から得たエネルギーを交流電界に与えてそれを励振する。こうして発生した交流は,一つの空胴から同軸ケーブルまたは導波管によって外部に取り出される。共振器には,いくつかの共振周波数が存在するが,隣どうしの陽極分割間隙の電界位相差が180度のものがもっとも能率がよい。さまざまな形状の陽極が考案されているが,いずれも主周波数のみ発振するようくふうされている。出力が大きく,能率も高いのでレーダーや電子レンジなどに広く使われている。
執筆者:相浦 正信
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GHz 帯の超高周波発振用の電子管.発振原理を図に示す.平行な陽極と陰極との間に一様な電場Eが与えられ,そのうえ電場に直角に磁場Bが加えられているとする.陰極のP点から発した電子は電場Eによって陽極に引かれるが,磁場Bのため速度に比例した力を受け,図のように円弧を描いて移動する.この際,磁場Bが小さければ電子は l1 のように移動して陽極に達するが,Bが大きくなると l2 にように陽極に達しないで,円弧を描いて横に移動していく.その限界磁場は
B =
であり,mは電子の質量,eはその電荷である.このとき,電子は ωc(サイクロトロン角周波数)で回転し,vc の速度で横に移動する.電子のサイクロトロン運動によって電極には電圧が誘起されるので,この電圧と外部共振回路との間で発振が生じる(A型振動).また,この電子の運動は,分割された陽極間に電圧を誘起して外部共振回路で発振する(B型振動).この原理で,それぞれA型とB型のマグネトロンがつくられる.
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(荒川泰彦 東京大学教授 / 桜井貴康 東京大学教授 / 2007年)
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