国有財産のうち、国において皇室の用に供し、または供するものと決定した財産。明治憲法時代には、天皇の財産(御料とよんだ)は国有財産と区別されて、宮内省の管理下に置かれた。しかし日本国憲法は、皇室財政の民主化を図るため、まったく私財と認められるものを除いて、すべて国有財産とし、皇室用財産として行政財産に属することになった(憲法88条、国有財産法3条2項)。多くの不動産が国に移管されたが、皇室用財産として、現在、皇居、京都御所、大宮御所、修学院(しゅがくいん)離宮、桂(かつら)離宮、赤坂御用地、葉山御用邸、那須(なす)御用邸、須崎(すさき)御用邸、常盤松(ときわまつ)御用邸、御料牧場、埼玉鴨場(かもば)、新浜(しんはま)鴨場、高輪(たかなわ)皇族邸、正倉院および各陵墓などがある。
国有財産法上の管理機関は内閣総理大臣であるが、皇室用財産に関する事務は宮内庁がつかさどり、原則として、その譲り渡し・譲り受け、もしくは賜与することはできない(憲法8条・88条)。
[池田政章]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…国有財産は行政財産と普通財産に大別される。行政財産は,(1)公用財産 国の事務,事業またはその職員の住居に供する財産で,一般庁舎,国立学校・文教施設,防衛施設等からなる,(2)公共用財産 国が直接公用に供する財産で,皇居外苑,新宿御苑,北の丸公園,京都御苑等からなる,(3)皇室用財産 国において皇室の用に供している財産で,皇居,赤坂御用地,京都御所等からなる,(4)企業用財産 国の企業とそれに属する職員の住居に供する財産で,国有林野事業,郵政事業,アルコール専売事業等からなる,の4種に区分される。一方,普通財産とは,行政財産以外の国有財産をいい,原則として特定の行政目的に供されることのない財産であり,財産法,相続税法等の規定により,租税物納として国庫に納付されたもの,明治初期の地租改正で官有地とされたものが含まれる。…
※「皇室用財産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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