日本大百科全書(ニッポニカ) 「盲聾教育」の意味・わかりやすい解説
盲聾教育
もうろうきょういく
視覚と聴覚に障害をあわせもつ重複(ちょうふく)障害児に対する教育をいう。人間にとってもっともたいせつな視覚と聴覚の障害のため教育の困難性がきわめて高い分野である。
アメリカのハウSamuel G. Howe(1801―76)によるローラ・ブリッジマンLaura Bridgeman(1829―98)の指導が1837年に開始され、盲人用文字の読み書きや指話法を習得したと伝えられている。その約半世紀後、アン・サリバンAnne Mansfield Sullivan Macy(1866―1936)によるヘレン・ケラーHelen Keller(1880―1968)の指導の成功例は有名である。日本では、1952年度(昭和27)から山梨県立盲学校が盲聾児の教育を開始したのが始まりである。元東大教授梅津八三(はちぞう)らによる努力の成果に基づき、盲学校を中心として盲聾児に対する熱意ある教育実践が定着化してきた。実験学校制度による教育・研究の助成や国立特殊教育総合研究所(神奈川県横須賀市)の設置、日本盲ろう者を育てる会の発足(1973)などの対策がみられたが、アメリカのような「盲聾センター」の確立が望まれる。指導は、障害の発生時期や程度により異なるが、歩行、手の操作、身ぶりサイン、触運動の統制、点字、指文字による交信法など、個人差に応じて段階的、系統的な指導が行われる。
[瀬尾政雄]