翻訳|stoma
大腸がんなどの手術後に、腸管の内容物を体外に排泄(はいせつ)するために人工的につくられる孔(あな)。消化管ストーマともよばれる。腹部に開けた孔から腸管を引き出し、体表に開口部をつくり人工肛門を造設する。ストーマは造設される孔のことで、ギリシア語で「口」を意味する。一般に「ストーマ」というと人工肛門をさすことが多く、膀胱(ぼうこう)がんなどで尿路変向術後に造設されたものはウロストーマ(人工膀胱)とよばれる。
人工肛門を大腸の一部である結腸に造設する場合は「結腸造瘻(ろう)術」(結腸人工肛門)とよび、ほかに小腸の一部である回腸に造設する場合は「回腸造瘻術」(回腸人工肛門)という。
人工肛門には「一時的人工肛門」と「永久人工肛門」の2種があり、前者は、腸管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)あるいは炎症などによる通過障害に対する治療の際に一時的に造設し、通過障害が改善すれば閉鎖する。これに対して後者は、大腸がんや直腸がんの治療により肛門からの排泄機能の温存ができない場合などに造設される。人工肛門はさらに、その形によって「単孔式」と「双孔式」とに分けられる。単孔式が口に近いほうの腸管を体表に引き出し造設するのに対し、双孔式はおもに一時的人工肛門として口側と肛門側の両方に孔を開けるものである。
人工肛門には便を受けるためのパウチとよばれる袋を取り付ける。パウチは面板に接続され、面板を皮膚に貼り付けて固定する。
人工肛門や人工膀胱をもつ人を「オストメイト」とよび、ストーマやストーマ装具を用いて行われる排泄管理やケアを総称して「ストーマケア」という。オストメイトやその家族が、生活のなかでストーマを適切に取り扱えるよう支援するストーマ外来が設置されている医療機関も増えており、全国規模のオストメイト患者会である日本オストミー協会のウェブサイトでは、ストーマ外来を設置している全国の医療機関を検索することができる。
[渡邊清高 2019年8月20日]
肛門がなんらかの原因で排泄口としての役割を果たさなくなったとき,手術によって大腸の一部を体外に出して設置された排泄口を人工肛門という。切除不能の直腸癌や鎖肛などが原因で,永久的につくられる場合と,炎症などのため,肛門を使用しない目的で,一時的に設けられる場合とがある。人工肛門の設置部位は,一般に左下腹部が多いが,上腹部正中や右下腹部のこともある。人工肛門の形態には2種類あり,腸をループのまま体外に取り出し,数日後に切開して2孔式にする複流式人工肛門と,一方の腸を閉鎖し,口側の腸管のみを体外に引き出す単流式人工肛門とがある。一般に,複流式は一時的なものの場合に,単流式は永久的なものの場合に行われることが多い。人工肛門は括約筋がないので,排便回数が多いことや周囲の皮膚のただれ,においなど多くの問題をもっているが,手術や術後処理,装具などの改良によって改善されている。永久的な人工肛門をもつ人々の互助会組織も,全国的規模で結成されている。
執筆者:北島 政樹
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…治療は手術がただ一つの治療法である。術式は直腸癌の手術と同様で,直腸切断術および人工肛門造設術である。肛門周辺の皮膚を円形に大きく切開し,癌と肛門周囲の組織を直腸とともに切断する。…
…これに対して腹腔外の下部直腸の癌では,癌を含めて直腸および肛門を大きく切断し(この場合は切除とは呼ばず切断という言葉を使う),自然肛門部は縫合閉鎖する。そして健常部分のS状結腸の切断端を用いて,左下腹部に人工肛門を作成する(腹会陰式直腸切断術,マイルズ手術)。人工肛門は患者にとっていかにも不都合なことであるため,最近では前方切除術のような自然肛門からの排便を考慮する肛門括約筋温存手術や,術後の機能障害を防止する自律神経温存手術に努力がはらわれている。…
※「人工肛門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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