人工肛門

六訂版 家庭医学大全科「人工肛門」の解説

人工肛門
(直腸・肛門の病気)

 人工肛門ストーマ)は直腸がんなどで肛門、直腸切除する場合、または下部腸管内容が流れないようにするために造設されます。

 人工肛門のタイプはさまざまです。一般的には、S状結腸(けっちょう)人工肛門が作られますが、腸閉塞(ちょうへいそく)時に造設される場合は、S状結腸であったり、横行(おうこう)結腸であったりします。また、潰瘍性大腸炎の手術で一時的に造設される、回腸(かいちょう)人工肛門造設術などもあります。

 人工肛門の造設は、造設する部位、皮膚のしわ(へそも含めて)、手術(そう)(傷)を考えて、患者さんが自分で管理できる位置を選択します。また、立ったり、座ったり、歩いたりして装着感に問題がない部位を選ぶ必要があります。現在は、人工肛門の実際面を考える専門の医師、看護師と、精神面を援助してくれる人工肛門の専門セラピスト(ET)や専門の事務員が援助してくれます。

装具

 人工肛門の周囲の皮膚に接する部分(フランジ)と袋が一体になっているワンピース型と、フランジと袋が分かれるツーピース型とがあります。

 フランジ部分の皮膚接着面は、カラヤゴムやカラヤペーストなどの皮膚緩衝(かんしょう)作用のある材質が使われています。これは皮膚を弱酸性(pH5)に保ち、皮膚の正常化、皮膚の抵抗力の維持、皮膚感染の予防にはたらき、皮膚を保護します。

 時には、アレルギーによる皮膚炎や、皮膚にカンジダなどの真菌性皮膚炎が生じる場合があります。このような場合、ETなどの専門の看護師、褥瘡(じょくそう)対策メンバーによる適切な管理が必要になります。

人工肛門の合併症

 腸管の脱出や人工肛門の周囲からのヘルニアが生じることがあります。人工肛門の循環不全からくる狭窄(きょうさく)や、人工肛門の高さ(皮膚面からの距離)がないために起こる皮膚炎、皮膚潰瘍、人工肛門の脱落などがあり、このような場合、拡張術か再建術が必要になります。

人工肛門の種類図2

①結腸人工肛門

 結腸人工肛門には、一時的人工肛門と永久的人工肛門とがあります。永久的人工肛門であるS状結腸単式人工肛門は、多くはがんのために直腸と肛門を切除した時に作られ、通常、へその左下部に造設されます。

 長期の管理には、自然排便法、装具法、洗腸法の3種類があります。自然排便法は、普段は人工肛門にキャップをしておき、食べ方により排便習慣(規則正しい生活習慣により決まった時間に便意をもよおす)をつけられる場合があります。装具法は、ワンピース型(袋を残して便のみ捨てる)、またはツーピース型(フランジは残して袋と便を捨てたあと、袋の交換を行う)の装具を使う方法です。洗腸法は、腸内容を洗浄することにより1~2日ごとに排泄させる方法です。

 一時的なループ式の人工肛門は、下部腸管への腸内容の流れを止める目的でつくられ、右横行結腸かS状結腸に造設されます。右横行結腸人工肛門の腸内容は流動性で、皮膚炎を来しやすく、よりきめ細かな管理が必要になります。

②回腸人工肛門

 潰瘍性大腸炎など、大腸全摘手術を行った時に、一時的に回腸に人工肛門を造設する場合、および腸管の穿孔(せんこう)、縫合不全などで回腸より下部の腸管へ便が流れないようにするために一時的に造設される場合がほとんどです。

 最近では、直腸がんに対する超低位前方切除術や、内肛門括約筋切除術(ISR)といった手術が行われた場合に、縫合不全を予防するために、一次的に回腸人工肛門造設術を行う症例が増えています。回腸人工肛門を造設した場合、腸の内容物が液状で、周囲の皮膚炎を起こしやすく、とくにきめ細かい管理が必要になります。


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日本大百科全書(ニッポニカ)「人工肛門」の解説

人工肛門
じんこうこうもん
stoma

大腸がんなどの手術後に、腸管の内容物を体外に排泄(はいせつ)するために人工的につくられる孔(あな)。消化管ストーマともよばれる。腹部に開けた孔から腸管を引き出し、体表に開口部をつくり人工肛門を造設する。ストーマは造設される孔のことで、ギリシア語で「口」を意味する。一般に「ストーマ」というと人工肛門をさすことが多く、膀胱(ぼうこう)がんなどで尿路変向術後に造設されたものはウロストーマ(人工膀胱)とよばれる。

 人工肛門を大腸の一部である結腸に造設する場合は「結腸造瘻(ろう)術」(結腸人工肛門)とよび、ほかに小腸の一部である回腸に造設する場合は「回腸造瘻術」(回腸人工肛門)という。

 人工肛門には「一時的人工肛門」と「永久人工肛門」の2種があり、前者は、腸管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)あるいは炎症などによる通過障害に対する治療の際に一時的に造設し、通過障害が改善すれば閉鎖する。これに対して後者は、大腸がんや直腸がんの治療により肛門からの排泄機能の温存ができない場合などに造設される。人工肛門はさらに、その形によって「単孔式」と「双孔式」とに分けられる。単孔式が口に近いほうの腸管を体表に引き出し造設するのに対し、双孔式はおもに一時的人工肛門として口側と肛門側の両方に孔を開けるものである。

 人工肛門には便を受けるためのパウチとよばれる袋を取り付ける。パウチは面板に接続され、面板を皮膚に貼り付けて固定する。

 人工肛門や人工膀胱をもつ人を「オストメイト」とよび、ストーマやストーマ装具を用いて行われる排泄管理やケアを総称して「ストーマケア」という。オストメイトやその家族が、生活のなかでストーマを適切に取り扱えるよう支援するストーマ外来が設置されている医療機関も増えており、全国規模のオストメイト患者会である日本オストミー協会のウェブサイトでは、ストーマ外来を設置している全国の医療機関を検索することができる。

[渡邊清高 2019年8月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「人工肛門」の解説

人工肛門
じんこうこうもん
artificial anus

大腸の急性閉塞,直腸癌などの場合に腸内容物 (糞便) のすべてを持続的に排除するために人工的につくる腸瘻 (肛門) をいう。大部分は大腸,ことにS状結腸部につくる。一時的に造設してのちに閉鎖を試みる場合と,永久的に造設するものとがある。

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精選版 日本国語大辞典「人工肛門」の解説

じんこう‐こうもん ‥カウモン【人工肛門】

〘名〙 直腸癌など大腸下部ないし肛門部の手術後に、通常の肛門を閉じて腹壁に孔(あな)を作り、そこから排便するようにしたもの。
※通学物語(1941)〈渋沢秀雄〉父栄一の諾否「直腸に癌の疑があるために、腹部を切開して人工肛門を作る」

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デジタル大辞泉「人工肛門」の解説

じんこう‐こうもん〔‐カウモン〕【人工×肛門】

直腸大腸の一部を摘出手術した場合、正常な大腸の一端を穴をあけた腹壁に結合したときの便の排出口。

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世界大百科事典 第2版「人工肛門」の解説

じんこうこうもん【人工肛門 artificial anus】

肛門がなんらかの原因で排泄口としての役割を果たさなくなったとき,手術によって大腸の一部を体外に出して設置された排泄口を人工肛門という。切除不能の直腸癌や鎖肛などが原因で,永久的につくられる場合と,炎症などのため,肛門を使用しない目的で,一時的に設けられる場合とがある。人工肛門の設置部位は,一般に左下腹部が多いが,上腹部正中や右下腹部のこともある。人工肛門の形態には2種類あり,腸をループのまま体外に取り出し,数日後に切開して2孔式にする複流式人工肛門と,一方の腸を閉鎖し,口側の腸管のみを体外に引き出す単流式人工肛門とがある。

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世界大百科事典内の人工肛門の言及

【肛門癌】より

…治療は手術がただ一つの治療法である。術式は直腸癌の手術と同様で,直腸切断術および人工肛門造設術である。肛門周辺の皮膚を円形に大きく切開し,癌と肛門周囲の組織を直腸とともに切断する。…

【直腸癌】より

…これに対して腹腔外の下部直腸の癌では,癌を含めて直腸および肛門を大きく切断し(この場合は切除とは呼ばず切断という言葉を使う),自然肛門部は縫合閉鎖する。そして健常部分のS状結腸の切断端を用いて,左下腹部に人工肛門を作成する(腹会陰式直腸切断術,マイルズ手術)。人工肛門は患者にとっていかにも不都合なことであるため,最近では前方切除術のような自然肛門からの排便を考慮する肛門括約筋温存手術や,術後の機能障害を防止する自律神経温存手術に努力がはらわれている。…

※「人工肛門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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