日本大百科全書(ニッポニカ) 「真空溶解炉」の意味・わかりやすい解説
真空溶解炉
しんくうようかいろ
真空中で金属を溶解する炉。金属を真空溶解する方法は、雰囲気からの汚染がなく、また金属中のガス含有量を下げるなどの特徴がある。この炉は加熱方式によって抵抗式、誘導式、アーク式などの溶解炉に分類される。抵抗式溶解炉は、金属やセラミックスなどの抵抗体を発熱体として、発熱体表面からの放射伝熱によって金属を加熱溶解する炉である。この炉には1回当りの溶解量が1キログラム程度の小型炉が多い。誘導式溶解炉は、電磁誘導作用によるジュール熱で金属を加熱溶解する炉である。炉内の溶融金属は電磁力によって攪拌(かくはん)されるので、均質な製品ができる。この炉は小型炉から大型炉まで広範囲に用いられている。アーク式溶解炉は、消耗電極の下端と水冷るつぼの底とを接触させてアークを発生させ、アーク熱によって電極を溶解する炉である。電極はしだいに溶けて水冷の銅るつぼに滴状に落下し、このときに脱ガスが行われる。この炉はチタン、ジルコニウムなどの活性または高融点金属の溶解に広く用いられる。
[菊池 淳]