翻訳|nystagmus
眼球振盪(しんとう)ともいう。規則的,持続的に振れ動く眼球の往復運動をいう。ふつうは不随意に起こり,意識的に止めることはできない。眼振は往きと帰りの運動が等しい振子様眼振pendular nystagmusと,異なる衝動性眼振saccadic nystagmusに大別され,また振れる方向によって,水平,垂直,回旋などの名称をつけて呼ばれる。眼振には眼,内耳,脳幹,小脳の機能が関係していて,健康者でも,温水や冷水を耳に注入したとき(温度性眼振)や電車の窓などから外の景色を見ているとき(鉄道眼振)などに起こり,これらは生理的眼振と呼ばれる。生理的眼振に対して,眼や内耳,脳幹,小脳に異常があって起こる眼振を病的眼振という。病的眼振は,小眼球,先天性白内障,全色盲などの先天性視力不良やある種の斜視,内耳や脳幹,小脳の腫瘍や炎症などの疾患で起こるが,病気の進行状況によって変化したり,注視などによって,大きく影響される。眼振の種類や様子から逆に障害部位を診断することもある。
執筆者:岩重 博康
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…したがって,頭を約30度前屈して,外側半規管をほぼ水平の状態として身体を回転させると,外側半規管の中の内リンパの流動が起こり,それが膨大部の感覚細胞に伝わり,さらに前庭神経をへて脳幹や小脳および外眼筋に伝えられる。この感覚は実際にはめまい感として感じられ,その客観的現象としては,眼に眼振としてあらわれてくる。この現象をとらえて半規管の機能を知る目的で発展したのが,平衡機能検査にも用いられる回転検査である。…
…たとえば内耳に障害が起こると,その情報の一つは内耳神経を伝わって脳(とくに脳幹や小脳)に入り,眼を動かす神経に行く。この反射系路を医学的に前庭動眼反射と呼び,現象的には眼球振盪(しんとう)(眼振という)となって,異常な眼の動きとしてあらわれてくる。これは,正常健康人にはみられない眼の動きで,めまいのある人にはよくみられる現象である。…
…このように内耳に起こった異常は,前庭神経を経由して脳幹に入り,眼を動かす神経に伝えられる。めまいを起こしている人の眼を見ると,眼が激しく動いているのがみられることが多いが,これは眼振と呼ばれるものである。したがって,めまいを訴える人の検査として最もよく用いられるのは,眼振があるかどうかをみる検査である。…
※「眼振」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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