日本大百科全書(ニッポニカ) 「知的財産政策ビジョン」の意味・わかりやすい解説
知的財産政策ビジョン
ちてきざいさんせいさくびじょん
知的財産を国際競争力における強みとして活用する目的で、政府の知的財産戦略本部が定めた行動計画。2013年(平成25)6月に決定した。今後10年程度を見据えた知的財産政策展開の軸となる四つの柱と、それに沿った長期政策課題等を盛り込んだ内容で、同時に「知的財産政策に関する基本方針」も閣議決定された。2002年に当時の首相小泉純一郎が「知的財産立国」を宣言して以降、知的財産基本法の施行や50以上の関連法の改正などが行われてきた。知的財産政策ビジョンは、この知的財産立国宣言から10周年の節目に定められたものである。
同ビジョンに描かれている四つの柱は、(1)産業競争力強化のためのグローバル知財システムの構築、(2)中小・ベンチャー企業の知財マネジメント強化支援、(3)デジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備、(4)コンテンツを中心としたソフトパワーの強化、である。なかでも注目すべき点は、「産業競争力強化のためのグローバル知財システムの構築」において、職務発明の帰属の方向性を明確に打ち出したことである。職務のなかで発明されたものは、現行の特許法では発明者の従業員に特許権が帰属しているが、原則として法人に帰属、もしくは法人(使用者)と従業員の契約に委ねるとし、法人優位を明確にした。産業界の要望を取り入れ、発明者個人の権利を抑制する内容になっている。そのほか、知財紛争の処理機能強化、産官学の連携強化、コンテンツ産業の市場拡大に向けた制度整備などがうたわれている。
[編集部]