石油根源岩(読み)せきゆこんげんがん(その他表記)source rock of petroleum

改訂新版 世界大百科事典 「石油根源岩」の意味・わかりやすい解説

石油根源岩 (せきゆこんげんがん)
source rock of petroleum

石油根源物質を含み,石油がその中で生成したと考えられる岩石をいう。一般には,あまり熱変質を受けていない黒色あるいは暗灰色のケツ(頁)岩,泥岩石灰岩などの細粒堆積岩が根源岩として考えられている。石油母岩ともいわれるが,現在ではこの用語はあまり使われていない。

 根源岩の有機物分析によると,優秀な根源岩は,ケツ岩や泥岩の場合,有機炭素量1%以上で石油炭化水素抽出量200ppm以上含有する岩石とされているが,最近では,有機炭素量で0.5%以上,石油炭化水素抽出量で50ppm以上含有する岩石を良好な根源岩と評価基準を広げている。石油が発見されているいわゆる貯留層は,石灰岩あるいは砂岩質より構成されており,砂岩の有機物量はきわめて少ない。これは,粗粒な堆積岩中に有機物が捕獲されても,酸化などによって分解されるため,長年月の間保存されないからである。このため,砂岩は石油根源岩とは評価されず,細粒の石油根源岩が熱を受けて石油を発生し,それが移動して貯留岩(砂岩)に集積するという根源岩学説が1865年前後に提唱され,現在も支持されている。石灰岩は根源岩にも貯留岩にもなると一般的に考えられているが,まだ結論はでていない。

 一般に石油根源岩は,無機鉱物が95%以上で,有機物が5%以下であり,その有機物の90%以上がケロジェンである。有機物の残りの10%に石油炭化水素,アスファルト分,フミン酸などが含まれている。スチュアートD.R.Steuartは,ケロジェンkerogen(油母)をオイルシェール中の不溶性有機物の総称として提案(1912)したが,現在では堆積物中の不溶性有機物の総称として拡大解釈されている。このケロジェンは,化学的な単体を示す用語ではなく,有機・無機溶媒に不溶であり,熱分解によって石油性炭化水素を発生する有機物の集合体として扱われている。石油根源岩の評価は,その中に含有される有機物の量はもとより,石油あるいはガスのどちらを発生したのかという有機物の質,さらにいつの時代に発生したかという熱履歴すなわち熟成を調査する必要がある。現在,有機物の質と熟成は,根源岩中のケロジェンを対象として行われている。これは,ケロジェンが高分子の固体であり,石油性炭化水素のように移動しないで,根源岩中に残存しているからである。ケロジェンは大きく3タイプに分類される。タイプⅠは,海藻などに由来し,比較的水素に富んでいるため,石油の根源とされている。タイプⅢは,陸上の高等植物に由来し,酸素に富むため,ガスの根源とされ,タイプⅡは,ⅠとⅢの中間型とされている。ケロジェンの熟成度は,種々の方法で測定されているが,最近では,石炭組織学より導入したビトリナイト反射率値が最も信頼されている。タイプによって若干異なるが,この反射率値が約0.5%で石油が発生し始め,1.2%でコンデンセート,2%では熱分解ガスとなるとされている。有機物の量,質,熟成の三つを組み合わせて石油根源岩の評価がされる。極端な例では,有機物量が5%以上もあるのに,熟成度が低いため,油を発生しなかったというオイルシェールの場合もあるからである。根源岩から発生した油が,貯留層に集積するまでの一次移動の機構が未解決であるため,油と根源岩の対比も必要であり,炭素の安定同位体比や生物指標などの手法が用いられている。このように,石油根源岩の評価分析結果が,石油探鉱の上で重要な位置を占めているのである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石油根源岩」の意味・わかりやすい解説

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