石貨(読み)セッカ

デジタル大辞泉 「石貨」の意味・読み・例文・類語

せっ‐か〔セキクワ〕【石貨】

石でつくった貨幣ミクロネシアヤップ島で用いられた。パラオ諸島産の石を円盤状に加工したもので、大きなものでは直径数メートルもある。

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精選版 日本国語大辞典 「石貨」の意味・読み・例文・類語

せっ‐かセキクヮ【石貨】

  1. 〘 名詞 〙 石で作った円板状の貨幣。ミクロネシアのヤップ島などで儀礼的な贈与交換に用いられる。→貝貨(ばいか)

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改訂新版 世界大百科事典 「石貨」の意味・わかりやすい解説

石貨 (せっか)

西太平洋,ミクロネシアのヤップ島で使用されている,中央に穴をあけた円板状の石製の貴重品。石は南西約500kmのパラオ諸島マラカル島に産出する結晶石灰石である。直径20cmのものから,直径4m,重さ5tのものまである。パラオから筏で運ぶため,運搬に危険なだけでなく,石を切り出してこの形をつくるのに非常に手数がかかる。その大きさ(指距で測る),石質,色合いによって価値が定まる。このように貴重なものであるから,一つ一つに名前があり,歴史がある。1880年以後,ヨーロッパ人などが帆船で石貨を運ぶようになって非常に大きなものができた。石貨は真珠貝製の貝貨など他の貴重品と合わせて使用される。通過儀礼に際して男側と女側との間でなされる儀礼的交換,集会所や男子小屋の落成式などにともなう村落間の分配と交換,紛争の和解や贖罪,カヌーや家屋の建造に対する謝礼,呪師に対する献供など,社会生活のあらゆる側面で流通している。これらの石貨,貝貨はマチャーフと呼ばれ,文明国の貨幣(米ドル)とは別のカテゴリーとみなされ,後者はサルピーという。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石貨」の意味・わかりやすい解説

石貨
せっか

ミクロネシア、ヤップ島における交換用貴重品。この島では、儀礼的に貴重品を交換することを通じて、社会関係が維持される。この働きをするのが石貨と真珠貝貨(ばいか)である。石貨の材料はパラオ諸島マラカル地方に産出する白色ないしは淡褐色の結晶石灰石である。形状は中央に穴をあけた円板状で、小さいものは直径20センチメートル、大きいものでは直径4メートル重さ5トンというものまである。パラオ島において切り出した石貨を、カヌーまたは竹筏(いかだ)で運び帰ったもので、多大な労力が加えられている。1880年代オランダ人オキーフが帆船で石貨の運搬を請け負うに及んで、数量も増加した。しかし、これらの新品は大きなものでも古品に比べると価値が劣るとされる。石貨の価値は、その直径、色合い、形状のほか、その年代、歴史などによって個々に異なる。今日でも、これらの石貨や貝貨は、伝統的な社会関係を通じて、生き生きと交換されている。

牛島 巖]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石貨」の意味・わかりやすい解説

石貨
せっか

石を材料とした貨幣。ミクロネシアのヤップ島では 20世紀前期まで,結晶状の方解石を材料とし,中央に穴を開けた円盤形の石板を貨幣として用いた。直径 20cmから 3mに及ぶものまであり,材料はパラオ諸島で産した。ヤップ島の石貨はファーともパーランとも呼ばれ,2mくらいの大石貨は大型のカヌー1隻と交換される。またニュージーランドマオリ族は緑石 (この場合には実用価値もある) を交換に用いていた。しかし,宝貝を使った貝貨が通常の貨幣とほぼ同様に流通したのに比べると大石貨は運搬の不便さもあって,主として集団間の紛争解決や冠婚葬祭における贈答や労力提供の支払いとして用いられ,大石貨に刻印を刻んで所有権の変更のみを示した。

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