貝製の交換用貴重品。オセアニア地域、とくにメラネシアとニューギニアにおいて、商品取引交換の手段としての意味をはるかに超え、社会的交換手段として生き生きと交換されている。貴重品としての貝貨は、ある社会関係(結婚、秘密結社への入社、集団間の政治同盟)を生み出すために、また、社会諸関係のなかの不和を解消(祖先への寄進、殺人や侮辱に対する償いによって)するために、そして、上位の社会的地位を創出(ポトラッチ的な消費によって、またビッグマンや首長が蓄積し再分配することによって)したり、象徴化したりするために、見せびらかしたり、贈与したり、再分配したりする貴重品ということができる。代表的なものをあげれば、ロッセル島の赤貝の首飾り、トロブリアンド島などのクラ交換に使用される首飾りと腕輪、ソロモン諸島の首飾り、ヤップ島の真珠貝貨などである。ニューギニア北方の島々(トロブリアンド島、ドブ島など)の間にみられるクラ交易環の中心的贈答品は、非実用的で象徴的価値をもつ赤貝製の首飾りと白貝製の腕輪である。これらの貴重品は生活必需品でもなく、装飾品としても実用には供されない。ヨーロッパにおいて例えれば、王位継承を象徴する王冠の宝石のようなものと説明されている。北米先住民のイロコイ人、アルゴンキン人の社会でも貝製数珠(じゅず)玉を多数紐(ひも)に通した貝貨が知られており、西アフリカでも「カウリ」とよばれる貝貨が流通している。
なお、中国では布銭、刀銭などの流通以前にコヤスガイ(子安貝)が貨幣として流通したと考えられ、買、財など経済に関係する字がしばしば「貝」の字を伴っている。
[牛島 巖]
貝殻製の貨幣。貝貨はオセアニア地域,とくにメラネシアではかりしれないほどの重要性をもち,商品交換の手段としての意味をはるかに超えた社会的交換手段として機能している。このような貴重品としての貝貨は,(1)ある社会関係,例えば結婚,秘密結社への入信,部族間の政治同盟を生みだすために,(2)社会関係のなかの不和を解消するために,例えば祖先への寄進として,あるいは殺人や侮辱に対する償いとして,(3)上位の社会的地位を創出したり象徴化したりするために,例えばポトラッチの贈与物として,あるいは重要人物,首長,王が蓄積し再分配する奢侈(しやし)品として,みせびらかしたり,贈ったり,再分配したりする物品にほかならない。ロッセル島の赤貝製首飾,トロブリアンド諸島で行われるクラ価値物としての赤貝製首飾と白貝製腕輪,ソロモン諸島のカキの貝殻製首飾,ヤップ島の真珠貝貨などオセアニアの島々で広く見られ,北アメリカのイロコイ諸族,アルゴンキン諸族でも貝製数珠玉を多数紐に通した貝貨が知られている。
→タカラガイ
執筆者:牛島 巌
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…クレオパトラの真珠は有名であるが,世界最大の真珠は長さ50.8mmのヨウナシ型の〈ホープの真珠〉で,日本最大のものは御木本幸吉がアワビから得た長径24mm,短径19mmの真珠である。
[貝貨]
タカラガイ類は特殊な形をしているが,このうち中国では古代にキイロダカラガイの殻が貨幣に使用され,殷墟(いんきよ)から出土している。しかし,インド,アフリカではもっと後世に及び,太平洋諸島,とくにニューギニアでは最近まで使用されていた。…
※「貝貨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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