人形浄瑠璃,歌舞伎狂言,あるいは佐藤忠信が碁盤を持って立回りを演じる場面の通称。《義経記》に義経の吉野落ちのおり忠信が奮戦したことが描かれるが,やがて忠信が碁盤をもって戦ったという伝説が生まれ,横河覚範との立回りを中心とした荒事芸として劇に採り入れられる。浄瑠璃では,1676年(延宝4)の古浄瑠璃,80年の金平浄瑠璃などの同名題が知られる。歌舞伎では94年(元禄7)大坂の岩井半四郎座の同外題が早いものであるが,これは前年の京の村山座《心中八島》の趣向どりである。《吉野静碁盤忠信》(1698年江戸の中村座)で初世市川団十郎がはじめて演じたという。1725年(享保10)5月に2世団十郎も演じたが,当りをとらず,28年の《兜(ほしかぶと)碁盤忠信》が好評であった。近代では河竹黙阿弥の《千歳曾我源氏礎》(1885)の三幕目に採り入れられ,1911年7世松本幸四郎襲名披露に同名題の狂言が右田寅彦により作られた。
執筆者:近藤 瑞男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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