移動演劇(読み)イドウエンゲキ

デジタル大辞泉 「移動演劇」の意味・読み・例文・類語

いどう‐えんげき【移動演劇】

簡単な舞台装置を用い、小編成劇場のない地方などを巡業して行う演劇

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精選版 日本国語大辞典 「移動演劇」の意味・読み・例文・類語

いどう‐えんげき【移動演劇】

〘名〙 簡単な編成と舞台装置で各地を巡業する劇団の演劇。旅芝居と区別し、近代では営利目的としないで文化運動の一環として行なうものをいう。日本では、昭和初期に、日本プロレタリア文芸連盟が行なった「トランク劇場」が先駆

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改訂新版 世界大百科事典 「移動演劇」の意味・わかりやすい解説

移動演劇 (いどうえんげき)

数多くの場所を移動しながら行われる演劇活動。広義には,旅役者の地方巡業なども含むが,普通は,営利をおもな目的としない主催者が演劇の実際の上演を見る機会の乏しい人々のために行う活動を指す。日本では,1920年代に日本プロレタリア文芸連盟が工場労働者などを観客として行った〈トランク劇場〉がその例である。この場合,上演に必要なものをすべてトランクに収めて移動することができるという身軽さと,観客に左翼思想を吹きこむという啓蒙性に特色があった。日本の移動演劇は,41年に内閣情報局と大政翼賛会が工場や学校の慰問を通じて戦意高揚をはかるために発足させた〈日本移動演劇連盟〉によって,盛んになった。終戦直前に広島で被爆した丸山定夫の率いる〈桜隊〉は,この連盟の活動の例として特に記憶される。第2次大戦後に前進座などの劇団が劇場以外の場所で行った巡演も移動演劇の一種といえるし,現在の大小多くの劇団による地方巡演,学校巡演にも同じ演劇普及の精神を見ることができよう。また60年代後半から70年代にかけての前衛劇運動において,たとえば〈演劇センター68/69〉の黒色テント移動公演,また海外ではP.ブルック率いる一座のアフリカ巡演など,〈移動する演劇〉が演劇普及の意味合いを超えて,新しい演劇的地平開拓の重要な一手段となったことも忘れることはできないだろう。
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