稲荷山古墳出土鉄剣(読み)いなりやまこふんしゅつどてっけん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「稲荷山古墳出土鉄剣」の意味・わかりやすい解説

稲荷山古墳出土鉄剣
いなりやまこふんしゅつどてっけん

埼玉県行田(ぎょうだ)市埼玉(さきたま)にある埼玉古墳群の一基、稲荷山古墳前方後円墳)より出土した鉄剣。1968年(昭和43)発掘調査の際、墳頂部の第1主体部の礫槨(れきかく)から出土した。剣の長さ73.5センチメートル、身幅3.15センチメートル。78年保存処理のため錆(さび)落とし作業中、剣身の表裏に、115文字の金象嵌(きんぞうがん)銘文が発見された。銘文中の「辛亥(しんがい)年七月中」「獲加多支(わかたける(ろ))」「杖刀人」、8代にわたる人名など、5世紀の古代史・考古学研究のうえできわめて重要な史料となっている。現在は保存処理され、鏡、環鈴など他の出土品とともに現地の「さきたま資料館」に保管展示されている。83年国宝に指定された。

[柳田敏司]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「稲荷山古墳出土鉄剣」の解説

稲荷山古墳出土鉄剣
いなりやまこふんしゅつどてっけん

埼玉県行田市埼玉(さきたま)稲荷山古墳出土の有銘鉄剣。古墳は古墳中期の前方後円墳。鉄剣は1968年(昭和43)の発掘調査で後円部の礫槨(れきかく)内から出土し,78年に銘文が発見された。長さ73.5cm,剣身の両面に115文字が金象嵌(ぞうがん)されている。銘文によると,この剣は辛亥(しんがい)年(471年か)にヲワケ臣が作らせたもので,祖先オホヒコからヲワケまで8代の系譜を記し,代々大王の宮を警護する杖刀人(じょうとうじん)の長であったこと,ヲワケがワカタケル大王の統治を助けた記念としてこの刀を作ったという由来が記されている。この鉄剣銘からは,大和政権に仕える5世紀後半の東国豪族の姿が読みとれる。文化庁蔵。国宝。

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旺文社日本史事典 三訂版 「稲荷山古墳出土鉄剣」の解説

稲荷山古墳出土鉄剣
いなりやまこふんしゅつどてっけん

1978年に115字の銘文が判明した古墳時代後期鉄剣
稲荷山古墳は埼玉県行田市の埼玉 (さきたま) 古墳群にある全長約120mの前方後円墳である。銘文は115の漢字の銘で,乎獲居 (おのわけ) 臣の7代前の意冨比垝 (おおひこ) からの名前がわかり,代々杖刀人の首として獲加多支鹵 (わかたける) 大王まで仕えたことが記されている。銘文の「辛亥年」は471年,「獲加多支鹵 (ワカタケル) 大王」は,『記紀』に見える雄略天皇と考えられている。銘文から5世紀後半に大和政権の支配が東国に及んでいたと想定されている。

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