鉄製の剣。日本では石剣、銅剣にかわって、弥生(やよい)時代中期中ごろに出現する。現在、弥生時代に属する鉄剣は北部九州を中心にして60例ほど出土している。終末期のものを加えると100例を超し、分布は関東にまで広がっている。関(まち)・茎(なかご)の形態、茎・目釘(めくぎ)穴の有無などさまざまであるが、剣身の長さは普通15~30センチメートル、長くても40センチメートルほどで、長剣に属するものはなく、すべて短剣の部類といえよう。剣身が短く茎が長いものの一部に槍(やり)と考えられているものもあるが、木柄(もくへい)の残存状態が悪く、確たるものはない。ただ、かつて中山平次郎(へいじろう)(1871―1956)によって紹介された福岡県糸島(いとしま)市二丈吉井(にじょうよしい)出土の異形鉄剣は、青銅製の翼状の鐔(つば)をはめていた。これは朝鮮楽浪古墓(らくろうこぼ)、中国洛陽焼溝漢墓(らくようしょうこうかんぼ)などに類例があり、槍と考えられる。
古墳時代には長剣も出現し、鉄剣は前期古墳の副葬品として多く出土する。後期になると鉄刀が圧倒的に多くなり、鉄剣は減少していく。古墳時代にも槍または手矛(てぼこ)と考えられているものもある。
[橋口達也]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…したがって刀剣といった場合,広義には打物武器を汎称するものであり,剣,大刀(たち),太刀(たち),刀,脇指(わきざし),短刀などのことをいい,そのほか槍(やり)や薙刀(なぎなた)なども含まれる。日本では弥生時代に銅剣が用いられ始め,古墳時代初期には鉄剣と鉄刀の両方が存在し,後期ではほとんど鉄刀だけとなる。それらはすべて反りのない直刀であって,反りのついたいわゆる日本刀が完成されるのは,平安時代中期ころのことである。…
※「鉄剣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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