空中指令機(読み)くうちゅうしれいき(英語表記)airborne command post

改訂新版 世界大百科事典 「空中指令機」の意味・わかりやすい解説

空中指令機 (くうちゅうしれいき)
airborne command post

略称ACP有事の際に空中で待機し,地上指揮所が破壊された場合,搭乗している指揮官幕僚および操作員が,代替指揮所の機能を果たせるように必要な器材を搭載した大型航空機。全面核戦争時に戦略軍を指揮する国家レベルの指令機から,一地域の戦闘を指揮する指令機まで各レベルのものがある。いずれも空中にあることにより,核攻撃による被害をこうむりにくいことと通信のカバーする領域が拡大される利点を活用したものである。指令機に必要な器材は,敵の侵攻の状況およびみかたの兵力の展開の状況を時々刻々に表示する装置と,指揮官が決定したみかたの作戦行動を各部隊に指令する通信装置である。敵の状況は,みかたのレーダーやその他の情報によって知り,それがデータ通信系により指令機に伝送され,機上コンピューターにより整理され,表示される。みかたの状況はデータ通信系および音声通信系により伝えられる。通信系は,傍受を防ぐため暗号化される。一方,レーダーの位置を高くすればするほど,遠方の低空目標が見える特性を利用して,飛行機にレーダーを搭載した早期警戒機があり,これは主としてレーダー情報を地上の指揮所に送ることを目的としたものである。空中指令機にレーダーを搭載すれば,早期警戒機と指令機の機能を兼ね備えることとなり,そこで生まれたのが空中警戒管制システムAWACS(エーワツクス)(airborne warning and control systemの略)である。1982年現在,空中指令機としては,ボーイングEC135(アメリカ),ボーイングE4(アメリカ)があり,戦略軍の指揮に用いられ,後者は国家有事指令機NEACP(ニーシプ)(national emergency ACPの略)として用いられる。AWACSとしてはボーイングE3(アメリカ),BAeニムロッドAEW(イギリス),ツポレフTu126モス(ソ連)があり,主として空軍の指揮に用いられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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