略してAEW機とよばれることもある。低空から侵入する目標を探知するために,レーダーを搭載して高い高度での警戒監視飛行を目的とする航空機。大型のレーダーを機上に背負うように搭載したものが多い。レーダーの電波は直進し,地球は球体であるため,地上にあるレーダーでは,低空を侵入してくる敵の航空機やミサイルを早期に発見することは困難である。レーダーを搭載した航空機を高空におけば,地上レーダーで監視するよりもより遠距離で敵を発見できることから,こうした早期警戒機が開発された。1976年9月6日に発生したMiG25事件では,ソ連のミコヤンMiG25戦闘機が日本近海で急激に降下し,自衛隊の地上レーダーで監視できない超低空で侵入して函館空港に強行着陸したが,早期警戒機はこの例のように低空侵入する航空機やミサイルを探知するために有効な手段である。アメリカ空軍は1952年にロッキードCH121型輸送機にレーダーを搭載して早期警戒機の運用を開始し,その後,低空目標の探知能力に優れたレーダーを搭載するAWACS(エーワツクス)(airborne warning and control systemの略)機(空中警戒管制機)としてのボーイングE3A型機を77年から部隊で運用している。これは,低空を侵入してくる航空機を早期に発見する能力のほか,自軍の戦闘機などに対し指揮管制する能力を持つ。またアメリカ海軍は,艦隊護衛のために艦載型の早期警戒機の研究を進め,69年には小型の艦上機にレーダーを搭載したグラマンE1B型機を配備し,さらに搭載レーダーの低空目標に対する探知能力の向上や搭載用計算機の信頼性等の向上を図り,グラマンE2A型,E2B型を経てE2C型機を73年から部隊で運用している。アメリカのほか,ソ連はツポレフTu126,イギリスはBAeHSニムロッドなどの早期警戒機を開発している。日本でも83年になって航空自衛隊の早期警戒機としてE2C型機が導入された。早期警戒機のおもな搭載機器は,目標の位置を測定するための捜索用レーダー,目標に質問電波を発しその応答によって敵か味方かを識別するための敵味方識別装置,目標の発する電波を受信して発信源を判別するための電波探知装置,地上との通信装置,独力で正確・安全な航行を行うための航法装置,早期警戒機の情報処理の中枢をなすコンピューターなどである。
執筆者:別府 信宏
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相手の航空攻撃を早期に探知するため、大型のレーダーをつけて空中で警戒にあたる軍用機。空中からの警戒が大きな意義をもつのは、警戒網を前進して配せるという点に加え、地上や艦載レーダーでは地球の丸みにより水平線の陰になる低空飛行目標を探知できないのに対し、高い位置から見通して遠距離から発見できるためである。実用化が開始されたのは第二次世界大戦後で、艦載用としてはE‐2のような新規設計のものもあるが、陸上基地で使う大型機は輸送機をベースにしたものが多い。米空軍のE‐3はボーイング707旅客機、ロシアのA‐50はIl‐76貨物輸送機から生みだされたものである。早期警戒機は防空システムの一部として、得た情報を迎撃戦闘機や対空ミサイル部隊に送るが、しだいに指揮能力が強化され、戦域全体の状況を把握し、戦術攻撃部隊の指揮までできるようになっている。E‐3のように指揮能力の大きいものはAWACS(Airborne Warning And Control System、空中早期警戒管制機)ともよばれている。
[藤田勝啓]
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