ロメ協定(読み)ろめきょうてい(その他表記)Lomé Convention

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロメ協定」の意味・わかりやすい解説

ロメ協定
ろめきょうてい
Lomé Convention

ヨーロッパ共同体EC)9か国とアフリカカリブ海、太平洋地域の発展途上国(三地域の頭文字をとってACP諸国という)46か国との間で結ばれた経済協力協定。1975年2月にトーゴの首都ロメにおいて調印され、76年4月に発効した。

 ECは、かつてヨーロッパ諸国と植民地・保護領など特別の関係を有していた非ヨーロッパ諸国との間の連合関係を規定しているが、この連合関係の原型が、1963年7月、当時のヨーロッパ経済共同体EEC)6か国とフランス連合に属するアフリカ18か国との間に結ばれたヤウンデ協定である。その内容は、相互特恵による貿易関係の一体化と開発援助資金の供与であった。さらに、アフリカ諸国との連合関係は、イギリス連邦に属する東アフリカ3か国にも拡大され(アルーシャ協定)、71年から実施された。ヤウンデ協定とアルーシャ協定は、75年1月末に失効することになっており、他方、イギリスのEC加盟(1973)によってイギリス連邦特恵制度は75年以降消滅することになっていた。そこで、前記二協定にかわるものでイギリス連邦諸国も加えた新協定としてロメ協定が締結されたのである。

 ロメ協定のおもな内容は、〔1〕ACP諸国のEC向け輸出については、ECは原則として関税および貿易制限を撤廃するが、ACP諸国のECからの輸入については最恵国待遇を提供するだけでよい(逆特恵の廃止)、〔2〕ACP諸国の輸出所得が一次産品価格の変動によって影響を受けないようにするため輸出所得安定化制度(STABEX)を導入する、〔3〕ECはヨーロッパ開発基金(EDF)を設けて、ACP諸国に経済・技術援助を行う、などである。

 ロメ協定は第一次協定(1976年4月~80年2月)のあと、第二次協定(1980年3月~85年2月)、第三次協定(1985年3月~90年2月)として継続されていたが、ACP諸国はその間に増加し、第二次協定には58か国、第三次協定には64か国が参加している。また、第二次協定では、鉱産物についても輸出所得安定化制度が設けられ、第三次協定では、これをさらに拡充して鉱産物生産・輸出能力維持制度(SYSMIN)が発足した。さらに90年末から協定期間を10年間に延長し、第四次協定がACP69か国との間で結ばれている。

[相原 光]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ロメ協定」の意味・わかりやすい解説

ロメ協定 (ロメきょうてい)
Lomé agreements

1975年1月末日に失効したヤウンデ協定の後をうけ,同年2月,トーゴの首都ロメにおいて,当時のEEC(ヨーロッパ経済共同体)9ヵ国とACP(アフリカ,カリブ海,太平洋地域)の発展途上国46ヵ国(当初)の間で締結された協定。(1)EC市場をACP諸国の産品に対して一方的に開放することにより後者の対EC輸出増大をはかること,(2)ACP諸国の輸出する一次産品について輸出所得補償制度(STABEX)を導入し,これら産品の輸出価格が下落して輸出所得が減少した場合,価格が回復するまでの期間,一定の条件のもとで無利子の融資を行うこと,(3)ACP諸国の工業化を促進するため資金と技術の両面から協力を行うこと,などをおもな内容としている。協定は76年4月から期限5ヵ年で発効したが,79年には援助の増額やSTABEXに一部工業品を含めることなどを盛り込んだ第2次ロメ協定が締結され(1980-85),続いて第3次協定(1985-90),第4次協定(1990-2000)と継続されている。協定は,市場に対する直接的介入を排除し,市場メカニズムを生かしながら一方的輸入の自由化や事後的な補償融資を通して加盟発展途上国の開発をはかろうとするもので,この点南北問題への新しい対応として注目されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロメ協定」の意味・わかりやすい解説

ロメ協定
ロメきょうてい
Lomé Convention

1975年2月にヨーロッパ共同体 EC9ヵ国と ACP (アフリカ,カリブ,太平洋地域の発展途上国) 46ヵ国の間で締結された協定で,76年4月に発効した。従来のヤウンデ,アルーシャの両協定に代るものであり,貿易協力,商品から得られる輸出収入,工業協力,融資および技術協力の4部から成る。このロメ協定で注目される点は,(1) 貿易協力のなかで EC・ACP間の逆特恵が廃止されたこと,(2) 商品から得られる輸出収入については,輸出所得安定化制度 STABEXと呼ばれる1次産品輸出の変動に対する補償融資制度が導入されたこと,である。そのための基金が用意され,対象 12品目から得られた輸出収入が平均的輸出所得を下回る場合に,融資または贈与を受けられることとなったことである。なお協定の対象となる1次産品のうち砂糖については「砂糖議定書」が別に設けられている。その後,81年に輸出所得安定化制度の対象を鉱物輸出にも拡張した第2次協定が発効,続いて 86年に第3次協定,90年に第4次協定が発効した。この第4次協定に加盟した ACP諸国は 68ヵ国。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ロメ協定」の意味・わかりやすい解説

ロメ協定【ロメきょうてい】

1975年にヤウンデ協定(1963年にカメルーンの首都ヤウンデでヨーロッパ経済共同体とアフリカの旧植民地諸国の間に結ばれた協定)参加国など,アフリカ,カリブ海,太平洋地域の計46ヵ国が,トーゴの首都ロメでヨーロッパ共同体(EC)諸国と締結した協定。内容は,貿易協力,一次産品輸出所得補償融資制度,資金・技術援助,工業協力など多岐にわたる。第2次(1980年―1985年),第3次(1985年―1990年),第4次(1990年―2000年)と延長されて,そのたびにACP(アフリカ,カリブ海,太平洋地域)諸国の要望に沿ってECによる援助や協力の内容が改訂されてきた。
→関連項目ヨーロッパ投資銀行

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ロメ協定」の解説

ロメ協定(ロメきょうてい)
Lomé

1975年2月トーゴの首都ロメで,EC9カ国とアフリカ,カリブ海,太平洋地域の46カ国(ACP諸国)の間で締結された協定。同年1月に失効したヤウンデ協定を継承するもので,EC市場開放によるACP諸国の輸出増大,ACP諸国に対する輸出一次産品への輸出所得補償制度導入,ACP諸国工業化支援などを規定。以後第4次まで継続延長され,2000年2月第4次ロメ協定失効後,ACPとEU間の自由貿易地域形成を目標にさらに20年の延長が決定された。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android