冠の一種。天皇および皇太子が元服のときに加冠前につける。《新撰字鏡》に〈比太比乃加加保利(ひたひのかかほり)〉とみえているように,前額部に当てるもので,幘(さく)に冠と同じ羅(ら)をたいらにつけ,頂の部分には何もなく,幘で頭に結びつけるようになっている。平安時代中ごろから用いられるようになり,いまに及んでいる。ただ現制では天皇,皇太子の成年式ばかりではなく親王,内親王の成年式にも用いられる。天皇と皇太子のそれは形を異にし,天皇のものは,幘につける羅は1枚になっており,3山となって中央が左右よりも高くなっている。皇太子のものは,羅は3枚に分かれ,そのおのおのに中央に1山があり,この3枚の端の部分が重なり合って中央の1枚が全部前にでている。またこれにつける紋は,江戸時代以前は加冠の者の家紋をつけることになっていた。
執筆者:河鰭 実英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…太政大臣が当たり,太政大臣がいないときにはとくに任命される。理髪の役は加冠に先立ち,空頂黒幘(くうちようこくさく)(薄物を二重にして花形に作り,紫の組紐を左右に付けた頂のない冠)を脱がせ,加冠後櫛(くし)で鬢(びん)を理する役で,左大臣もしくはこれに準ずる者が奉仕した。能冠は初めて空頂黒幘を頭に加える役で,内蔵頭が当たる例が多い。…
※「空頂黒幘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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