天冠(読み)テンカン

デジタル大辞泉 「天冠」の意味・読み・例文・類語

てん‐かん〔‐クワン〕【天冠】

《「てんがん」とも》
幼帝即位のときにつける冠。
仏や天人がつける宝冠
騎射舞楽などの際に小童が用いる冠。金属製、透かし彫りのある山形のもの。
能のかぶり物の一。金属製の輪冠に、中央に月や鳳凰ほうおうなどの立物たてものをつけ、四方瓔珞ようらくを垂れる。女神・天人などの役に用いる。
葬式のときに、近親者または死者が額に当てる三角形の白紙

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精選版 日本国語大辞典 「天冠」の意味・読み・例文・類語

てん‐かん‥クヮン【天冠】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「てんがん」とも )
  2. 幼帝が即位のときにつける礼冠(らいかん)。円頂で中央に飾りを立てる。
  3. 仏や天人などがつける宝冠。仏像がつけている冠をもいう。
    1. [初出の実例]「宍色菩薩天冠銅弐枚」(出典:大安寺伽藍縁起并流記資財帳(747)天平一九年)
    2. 「天冠を戴ける天人、瓔珞を懸たる(ぼさつ)、員不知ず」(出典:今昔物語集(1120頃か)一三)
  4. 冠の一種。騎射または舞楽などに童が用いた金銅の飾りの額当(ひたいあて)金物。〔西宮記(史籍集覧所収)(969頃)〕
    1. 天冠<b>③</b>
      天冠
  5. 高貴な人のつける冠。
    1. [初出の実例]「角こそはへずと、せめて天冠(テングヮン)の下に瘤でもはやし」(出典:浮世草子・国姓爺明朝太平記(1717)一)
  6. 能のかぶり物。金属製の輪状になった冠で、雲形や唐草模様の透かし彫りがある。中央には月や鳳凰などの立物をつけ、左右に瓔珞(ようらく)をたれる。女神、天女、官女などの役に用いる。
    1. [初出の実例]「かざりやにて天冠(テングヮン)物の見事に拵」(出典:浮世草子・新色五巻書(1698)二)

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改訂新版 世界大百科事典 「天冠」の意味・わかりやすい解説

天冠 (てんがん)

舞楽および能の被り物。舞楽の天冠は,金銅または銀銅で山形に作られ,唐草模様の透し彫があり,左右に剣形の飾りがあり,挿頭花(かざし)をさし,五彩の唐打の総角(あげまき)をつける。《迦陵頻(かりようびん)》《胡蝶》で童舞の舞人が用いる。能の天冠は金属製の輪状になった冠で,雲形または唐草模様の透し彫があり,中央に日輪・月輪・鳳凰(ほうおう)・白蓮・蝶・蔦紅葉などの立て物をつけ,左右に瓔珞(ようらく)を垂らす。天女・女神・精・官女などの役柄がかぶり,《羽衣》《胡蝶》《藤》《葛城(かずらき)》《楊貴妃》などのシテ,《絵馬》《恋重荷(こいのおもに)》のツレに用いる。
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世界大百科事典(旧版)内の天冠の言及

【舞楽装束】より

…金襴縁は金襴で縁どりされており,《打球楽》《陪臚》は赤地錦,《狛桙(こまぼこ)》《垣破(はんなり)》は萌葱地錦である。(4)童装束 幼童の舞に用いる装束で,大人用の物をそのまま子ども用に小さく仕立ててあり,模様,布地等はすべて同じであるが,ただ面は用いず,天冠(てんがん)(左方は金銅金具,右方は銀銅金具で,唐草の透し彫があり挿頭花をさす),童髪(どうはつ)(70cmほどの黒長髪の鬘(かつら))をつける。《迦陵頻(かりようびん)》《胡蝶(こちよう)》《陵王》《納曾利》等で用いる。…

※「天冠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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