1人乗り小型モーターボートの競走を対象とし、勝舟投票券(舟券(ふなけん/しゅうけん))を発売する公営ギャンブル。「モーターボート競走法」(昭和26年法律第242号)によって公認され運営されている。
第二次世界大戦後、地方財政健全化と造船関係産業振興の目的で立案企画され、競輪より3年遅れて発足した。初の開催は1952年(昭和27)4月6日、長崎県大村競走場。主催施行者は地方自治体に限られ、現在(2008)施行者は県1、市22、組合15、企業団1(施行者構成数は113)の計39団体。競走場は24か所、選手数1336人(うち女子159人)。年間売上げ高は1983年には約1兆4560億円で、公営5競技(ほかに競輪、オートレース、中央および地方競馬)のトップを占めたが、1984年以降は中央競馬にトップを譲っている。売上げは1980年の約1兆6300億円をピークに漸減傾向にあり、2007年度は約1兆75億円であった。売上げの75%を的中投票券に払い戻し、残り25%のうち約2.6%が日本船舶振興会(日本財団)への交付金、1.1~1.2%が地方公営企業等金融機構(2008年10月に廃止された公営企業金融公庫の事業を承継)、1.3%が日本モーターボート競走会に納入され、開催経費の実費分を除いた残額が施行者の収益となる。
日本船舶振興会への交付金は、〔1号〕海難防止と造船産業関連、〔2号〕文教、体育、福祉関連がある。
開催日数は、1競走場に1施行者だけの場合月間12日、2施行者の場合14日。ほかに日本国際博覧会(愛知万博)など国家的行事へ寄付するための特別協賛競走が年間12日。監督は国土交通省が行い、開催業務のうち競走に関する実務は日本モーターボート競走会が施行者から委託を受けて行う。
[石井恒男・西中 準]
スタートラインを挟み各150メートルを隔てて設けられた二つのターンマーク(浮標(ブイ))を6隻のモーターボートが左回りで3周または4周(優勝戦のみ)する。最高時速は約80キロメートル。各艇は定刻の2分前にピットを出て待機水面でスタートの準備行動を行い、大時計の秒針を見ながら十分に助走スピードをつけてスタートを切る。このときスタートラインを発走予定時刻の0~1秒間に通過しなければならない。早すぎるとフライング(F)、遅すぎると出遅れ(L)と判定され、ともに失格で舟券は払い戻しされる。失格の回数を重ねるとその選手は不利益処分を受ける。
使用艇は木製で長さ約288センチメートル、幅約126センチメートル、重量約70キログラム。エンジンは国産アウトボード(船外機)で2サイクル、排気量396.6cc、30馬力。ボート、エンジンともに選手の個人所有ではなく、各競走場登録のものを抽選により割り当てられる。ボートには艇底に段のあるハイドロプレンと、段のないランナバウトの2種類があり、スピード感に勝るハイドロプレンがおもに使われている。
[石井恒男・西中 準]
競艇選手の養成試験は年に2回あり、合格後、山梨県本栖(もとす)湖の研修所で1年間の養成訓練を受けて選手として登録される。選手の養成、登録、出走斡旋(あっせん)は日本モーターボート競走会が行う。また、ボート、エンジンの登録、審判員、検査員の養成も行う。女子選手は男子選手とまったく同等に扱われている。
[石井恒男・西中 準]
舟券は、1着を当てる単勝式、1着または2着を当てる複勝式、1着と2着を順位どおり当てる2連単、1着と2着の組合せを当てる2連複、1着2着3着を順位どおり当てる3連単、1着2着3着の組合せを当てる3連複、1着から3着までのうち2隻を当てる拡連複の7種類がある。
競艇レースの魅力は迫力あるスタートとスリルに富む第1旋回で、勝敗はほぼこれで決する。ただし、重要な伏線要素として待機水面での位置どり(コース争い)がある。内側の1コース(イン)は第1ターンマークにもっとも近い位置にあり、外側からの追い抜き、攻撃をかわしやすいので1~6コースのうち1着率がずば抜けて高い。したがって、舟券の推理はインをどの艇が占めるか、2コースから6コースまでの艇の並びがどうなるかというコースの推理が基本となる。エンジンの力と選手の技量の比較検討も欠かせない。エンジンは同一規格で製造されていても1基ごとに性能に微妙な差があり、選手の整備の巧拙でまた差がつく。舟券発売前の展示航走(2周)、その前のスタート練習、さらにその前の試運転に注目すれば各艇のエンジンのおおよその状態がつかめる。選手の技量は個人差、キャリアの差によって、運転技術、状況判断力に大きな開きがある。したがって、未熟な新人選手はエンジンの力を生かしきれない。以上の諸要素を総合して勝ち舟を推理する点に競艇のおもしろさがある。
[石井恒男・西中 準]
〈モーターボート競走法〉(1951公布)により公認,運営されるプロ選手によるモーターボートレース。勝舟投票券(舟券)を発売する。日本では,1931年隅田川で第1回の全日本モーターボート選手権大会が開かれるなど,第2次世界大戦前からアマチュアのモーターボート競走が行われていた。そして戦後の地方財政を立て直し,また造船産業の振興をはかる目的で51年に同法が立法化され,52年4月,長崎県大村市で初めて競艇レースが開催された。1997年現在,競走場は全国で24ヵ所あり,1996年度の年間売上げは約1兆8000億円,入場者数約5500万人となっている。競艇競走は運輸省の監督下,都道府県,または自治大臣が指定した市町村がその施行者となる。その数は97年現在,県,市町村,市町村で構成する施行組合など合わせて46ある。舟券売上げの75%が各舟券に案分して払戻金の形で支払われ,残りの25%が施行者である各地方自治体の収入などとなる。この収益は地方財政の改善,造船関連産業および海難防止事業の振興,体育,公益事業の振興に支出されている。舟券には単勝式,複勝式,連勝単式,連勝複式の4種類がある。単勝式は1着を,複勝式は1,2着のいずれかを,連勝単式は1,2着をその着順どおりに1組,連勝複式は1,2着をその着順に関係なしに1組的中させればよい。
競走の運営はモーターボート競走会が行っており,この統括機関が全国モーターボート競走会連合会であり,造船関連事業の振興というモーターボート競走法の目的を達成するために日本船舶振興会がある。競艇選手はモーターボート競走会連合会による1年間の研修期間を経た後,初めて選手として登録されレースにも出場できる。97年現在,1644名が登録され,うち女子130名となっている。レースに使用されるモーターボートは,長さ3m,幅130cm,重量70kgの木製ボートに,国産の船外機(アウトボード・エンジン)を取り付けたもので,時速は約80km。ボートには艇底が平らで段のついているハイドロプレーン(滑走艇)と段のついていないランナバウト(快走艇)の2種類がある。通常競走は6隻のモーターボートで,直線距離300mの位置に設けられた2点の浮標(マーク)間を3周(1800m)して着順を競う。1開催の最終日にはその開催の成績上位者による優勝戦が1レースだけ行われるが,この距離は4周(2400m)である。レースにはフライングスタートが用いられ,各隻はゆっくりと待機水面を周回し,大時計の指針がスタート時刻を表示したときにスタート線を全速力で通過してレースが始まる。
競艇競走の大レースとして,総理大臣杯,笹川賞,グランドチャンピオン決定戦,オーシャンカップ,モーターボート記念,全日本選手権(ダービー),賞金王決定戦のSG7レースがある。
執筆者:並河 史樹
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