笠踊(読み)かさおどり

改訂新版 世界大百科事典 「笠踊」の意味・わかりやすい解説

笠(傘)踊 (かさおどり)

笠や傘を手にしておどる踊り。笠踊は舞い手が着衣やかぶりものをまず手にして舞い清めるという神事舞の流れを受けるが,近世以降は踊りの小道具としてさまざまなくふうがこらされる。民俗舞踊では花で飾った笠を手にする山形県の花笠踊,群馬県の《八木節》,菅笠を効果的に使う富山県五箇山の《麦屋節》,塗笠をやっこが手にする岡山県白石島の白石(しらいし)踊などが著名歌舞伎舞踊では三段笠を両手に踊る《藤娘》や,花笠を手にもつ《菊づくし》などがある。傘踊唐傘を手にする踊りで,民俗舞踊では鳥取県因幡地方の鈴を付けた美しい傘をもつ踊りが著名。歌舞伎舞踊では長唄の《鷺娘》《手習子》,常磐津の《滝夜叉》,河東(かとう)節の《助六》などがあり,《汐汲》では三蓋(さんがい)傘をもって傘づくしを踊る。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「笠踊」の意味・わかりやすい解説

笠踊
かさおどり

民俗芸能の風流(ふりゅう)系の踊りで、笠をかぶる踊りと、笠を手に持つ踊りとがある。全国的に分布し、菅(すげ)笠、鳥追(とりおい)笠、花笠、綾藺(あやい)笠など、笠の種類はさまざまである。笠おどりの名は、江戸初・中期の歌謡集『落葉(おちば)集』に、「祇園(ぎおん)町踊之唱歌」としてみえる。笠は芸能では単に日よけ、雨よけの道具ではなく、神の依代(よりしろ)的な呪具(じゅぐ)として使われていたらしく、笠にいろいろな飾りを施す例が少なくない。たとえば京都府亀岡市の「出雲(いずも)神社の花踊」の笠はおのおの別の草花を平笠(ひらがさ)の頂に飾る。また笠をかぶる踊りには道を行く芸の印象が深い。雑俳に「御利生(ごりしょう)の雨ふり出しの笠おどり」とあるように、雨乞(あまご)い踊りとなっている例も多い。笠を持つ踊りには富山県五箇山(ごかやま)地方の『麦や節』の踊りその他があり、採物(とりもの)としての意識がうかがえる。沖縄の民俗芸能にもあり、古典舞踊にも二才踊り(男踊り)に「笠踊」がある。綾藺笠田楽(でんがく)系に多い。

[西角井正大]


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