菅笠
すげがさ
笠の一種で、カサスゲというスゲを材料として縫いつづった笠(縫い笠)の総称。縫い笠は、すでに「笠縫」の語が記紀などにあるように歴史は古い。平安時代の市女(いちめ)笠、桔梗(ききょう)笠、江戸時代の殿中(でんちゅう)、一文字、平笠、三度笠、加賀笠、ざんざら笠などは、いずれもスゲの縫い笠で、形態的には円盤形、円錐(えんすい)形、円錐台形、帽子形、光円球形、褄折(つまおり)形、桔梗形がある。これらは外出、旅行や雨天時に用いられていた。笠の着装には、内側に藁(わら)あるいはモロコシなどでつくった笠輪をつけて笠当てにし、紐(ひも)で頭に固定する。男女とも用い、北海道、沖縄を除いて広く全国的にみられたが、近年では東日本の農山村の一部で使われるだけとなった。日本の民俗芸能のなかには菅笠を持って踊る菅笠踊りも伝承されている。
[小川直之]
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すげ‐がさ【菅笠】
〘名〙 菅の葉で編んだ笠。菅の笠。すが
がさ。《季・夏》
※中右記‐天仁元年(1108)四月一七日「出車打出同前。車無二風流一、網代・八葉、凡令レ無二過差一、用二菅笠一也」
※雑俳・川柳評万句合‐安永九(1780)義二「あつひ事すけ笠うりの声ばかり」
すが‐がさ【菅笠】
〘名〙 菅(すげ)の葉で編んだ笠。すげがさ。
※万葉(8C後)一六・三八七五「すくなきよ 道にあはさば いろげせる 菅笠(すがかさ)小笠 吾がうなげる 珠の七つを 取替へも」
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菅笠【すげがさ】
スゲを縫いつづった笠。その歴史は古く,平安時代には市女(いちめ)笠,桔梗(ききょう)笠などがあった。江戸中期には最も広く用いられ,三度笠,褄折(つまおり)笠,一文字など種類も多く,産地として伊勢,加賀,摂津などが知られる。→笠
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デジタル大辞泉
「菅笠」の意味・読み・例文・類語
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世界大百科事典内の菅笠の言及
【笠】より
…江戸時代に入ると,形,材質の違いから,また身分,職業,用途によってさまざまな種類の笠が生まれ,武士はもとより町人,農民など男女を問わず広く用いられた。材料から藺笠,菅笠,竹笠,檜(ひ)笠,藤笠などと呼ばれ,製作上からは編笠,縫笠,組笠,網代(あじろ)笠,塗笠,張笠,綾藺笠などがあった。形の上から平笠,尖(とがり)笠,褄折(つまおり)笠,桔梗(ききよう)笠などがあり,用途上から雨笠,陽笠,祭りや踊りに用いる花笠,戦陣で下級武士のかぶった陣笠や騎射に用いた騎射笠などと呼ばれるものがあった。…
【スゲ(菅)】より
…菅笠を編むカサスゲやたまに庭に植えるカンスゲを含むカヤツリグサ科のスゲ属植物の総称で,植物学的にスゲと呼ぶ特定の種はない。 多年草で,地中に長い地下茎を出すものもあるが,細い葉と花茎が密に叢生(そうせい)して株を作る方が多い。…
【菅笠座】より
…室町時代,菅笠を販売した商人の座。古く《万葉集》にも〈難波菅笠〉とみえ,菅笠の産地として知られた摂津深江の菅笠商人の座が著名である。…
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