第一哲学(読み)ダイイチテツガク(英語表記)prōtē philosophia; first philosophy

デジタル大辞泉 「第一哲学」の意味・読み・例文・類語

だいいち‐てつがく【第一哲学】

アリストテレス哲学で、自然的存在などの特殊な存在ではなく、存在を存在一般として問題にし、その根本原理を研究する部門形而上学

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精選版 日本国語大辞典 「第一哲学」の意味・読み・例文・類語

だいいち‐てつがく【第一哲学】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ギリシア語] prōtē philosophia訳語 ) アリストテレスの哲学で、特殊の存在領域を限定せずに、存在を存在として問題にし、究極の根本原理を研究する学問、すなわち形而上学。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「第一哲学」の意味・わかりやすい解説

第一哲学
だいいちてつがく
prōtē philosophia; first philosophy

アリストテレスの用語。哲学を真理に関する学識と定義し,さらに「存在としての存在」すなわち自然学や数学のように特殊な存在ではなく,存在一般とその原理あるいは原因を研究する学を,「第二哲学」としての自然学に対して,「第一哲学」ないしはこれが存在一般の原因としての神を探究することから「神学」と呼んだ (『形而上学』) 。のちロードスのアンドロニコス (あるいは彼以前のペリパトス派の哲学者) によってアリストテレスの著作や講義が編集されたとき,この「第一哲学」についての書は,現在「形而上学」と翻訳される metaphysica語源となった"ta meta ta physika" (『自然学の次なる書』) といわれた。したがってアリストテレスのいう「第一哲学」とは遅くとも6世紀頃までに哲学上の術語として定着した「形而上学」にほかならない。

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世界大百科事典(旧版)内の第一哲学の言及

【アリストテレス】より

…彼の哲学を完結した体系として扱う後世の研究態度はここに由来する。〈著作集〉中の主要な作品を伝統的な配列に従って列挙すると,(1)〈オルガノン〉(〈道具〉の意)と総称される論理学的著作:《カテゴリアイ(範疇(はんちゆう)論)》《命題論》《分析論前書》《分析論後書》《トピカ(論拠集)》《ソフィストの論駁法》,(2)自然学:《自然学講義》《天体論》《生成消滅論》《気象学》《デ・アニマ(心魂論)》《自然学小論集》《動物誌》《動物部分論》《動物運動論》《動物進行論》《動物発生論》,(3)第一哲学:《形而上学》,(4)実践学・製作学:《ニコマコス倫理学》《エウデモス倫理学》《政治学》《弁論術》《詩学(創作論)》となる。これとは別に最初から公表を意図して書かれた作品もあったが,以後しだいに忘れられるようになり,今日では《魂について(エウデモス)》《哲学のすすめ(プロトレプティコス)》《哲学について》などの一部が,後世の人が断片的にまたは要約して引用した形で残されているにすぎない。…

【形而上学】より

…語源的には,アリストテレスの講義草稿をローマで編集したアンドロニコスが,《自然に関する諸講義案(タ・フュシカ)》すなわち自然学の後に(メタ),全体の標題のない草案を置き,《自然学の後に置かれた諸講義案(タ・メタ・タ・フュシカ)》と呼び,これがメタフュシカmetaphysicaと称されたことに基づく。内容的には,第二哲学としての自然学に原理上先立つ存在者の一般的規定を扱う第一哲学,自然的存在者の運動の起動者としての神を扱う神学を含む。ここから,自然的存在者の諸分野,諸原理を超えた(トランス)最高の原理,実在を扱う超自然学と解され,のち一般に経験的現象を超越した実在,原理あるいは仮説,想定に関する理論的考察という意味に使用される。…

【形而上学】より

…哲学の求めるべき〈知〉はどのようなものであるかがこの書の中心問題である。彼は〈理論(観想)的学問〉を,〈実践学〉や〈製作学〉から区別したうえでさらにその研究対象の違いによって〈自然学〉〈数学〉〈第一哲学〉の三つに分ける。この〈第一哲学〉は〈永遠で不動な独立存在〉について研究するもので,いわゆる〈形而上学〉にあたり,彼自身〈神学〉とも呼ぶものである。…

【自然哲学】より

…〈自然哲学philosophia natu‐ralis〉という言葉はセネカに始まるが,起源はソクラテス以前の自然学者たちによる自然(フュシス)の原理探究にさかのぼる。アリストテレスは運動する存在者に関する自然学を第二哲学と呼び,運動の起因者としての神の探究はこれを第一哲学(形而上学)にゆだねた。ストア学派以来,自然学は論理学,倫理学とともに哲学の主流であり,中世ではキリスト教の教義とともに創造神による被造物の全体が自然と解される。…

※「第一哲学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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