第一次共産党事件(読み)だいいちじきょうさんとうじけん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「第一次共産党事件」の意味・わかりやすい解説

第一次共産党事件
だいいちじきょうさんとうじけん

日本共産党に対する最初の弾圧事件。創立後非公然活動に従事していた共産党について、1923年(大正12)5月、佐野学(まなぶ)の管理していた秘密書類をスパイから入手した警察当局は、6月5日未明、堺利彦(さかいとしひこ)、山川均(ひとし)ら約80名を一斉検挙した。この検挙により、共産党の存在が世間に知られ、「第二の大逆事件」との宣伝で、運動全体に大きな衝撃を与えた。結局29名が起訴され、治安警察法違反で公判に付され、25年8月20日判決がなされた。第二審判決は翌年4月28日に言い渡され、大審院は8月4日被告人らの上告を棄却し判決は確定した。この事件は、創立されたばかりの日本共産党に対する最初の弾圧事件であり、日本の支配階級が、日本共産党の存在それ自体を許さない反動性を示し、反共主義の出発点となった。創立されたばかりの共産党は大きな打撃を受け、党内に解党主義的な日和見(ひよりみ)主義の潮流が生まれ、それとの闘争が重要課題となり、また天皇制政策のスパイ・挑発政策との闘争の重要性を教えた。

犬丸義一

『我妻栄他編『日本政治裁判史録3 大正』(1974・第一法規出版)』『犬丸義一著『日本共産党の創立』(1982・青木書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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