日本歴史地名大系 「筑後志」の解説
筑後志
ちくごし
成立 安永六年
解説 筑後国の地誌。「手控」(下書)が新有馬文庫に残る。著者の二人はともに久留米藩士。杉山は多芸多能かつ博学で、本書以外にも「米府記事略」「米藩詩文選」など五〇余種の著作がある。小川は領内の古蹟を調査し、郷土史料を収集して「志純筆記」「筑後式社考」などを著した。本書編纂の動機や目的は、筑前に「筑前国続風土記」、肥後に「肥後地志略」と一国レベルの地誌があるのに対し、「国内之物事巨細に悉く挙げ国事を輔」けるため筑後国の地誌を著すことにあった。本書は「古事記」や「日本書紀」をはじめとする旧記類を克明に調査し、古老の話を聞いては内容を吟味して著した当時として最高レベルの地誌。巻之一の建置沿革では六国史を引用して筑後国の成立と沿革を論じ、路程・郡名・村名・山川などを扱っている。以下、巻之二で藩封・関梁・租税・土産(産物)・神社、巻之三で寺院・墳墓・古蹟、巻之四で氏族、巻之五で文苑・祥異、巻之六で州南事実、巻之七(付録)で区域・形勝・山川・藩封・神社・寺院・古蹟に関するデータを追加している。本書編纂の方針は古蹟の来歴や神社の縁起、寺院の開基のうち証拠のないものを排し、州南(柳川・三池両藩領)の内容については境界を異にするため事実をつまびらかにできなかったとして「他日の考捜を期す」としている。本書の内容はのち「校訂筑後志」に吸収されている。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報