知恵蔵 「米国とイランの関係」の解説
米国とイランの関係
これ以降は、イランの核開発疑惑が焦点となる。02年8月、イラン国内のウラン濃縮工場の存在が指摘されると、イランは軍事転用を否定しながらも、国際原子力機関(IAEA)の要請を受け、濃縮ウランの製造を中止した。しかし06年、強硬派アフマディネジャド大統領がウラン濃縮を再開したことで、米国はイランに経済制裁を発動。アフマディネジャド大統領は対立姿勢を崩さなかったが、13年に大統領に就任した穏健派ロウハニは経済回復を優先し、米オバマ大統領と接近した。協議の結果、イランと米国を含む6カ国は15年7月、イランが核兵器開発を大幅に制限すること、イランへの経済制裁を段階的に解除することで合意した。この「イラン核合意」によって雪解けが進むと思われたが、米トランプ大統領が18年5月に核合意から一方的に離脱し、同時にイランへの経済制裁を再開した。欧米諸国はこれを批判したが、米国の強硬姿勢は収まらず、今後、米国抜きの「イラン核合意」の実効性をどう保っていくのか、極めて不透明な状況となった。
(大迫秀樹 フリー編集者/2020年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報