フィラリア症(読み)ふぃらりあしょう(英語表記)filariasis

翻訳|filariasis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィラリア症」の意味・わかりやすい解説

フィラリア症
ふぃらりあしょう
filariasis

糸状虫(しじょうちゅう)(フィラリア)のうち、とくにバンクロフト糸状虫とマレー糸状虫の感染、寄生による疾患で、フィラリア病ともいわれる。成虫は循環系(血管系とリンパ系)に寄生し、ほとんど移動しないが、孵化(ふか)直後の幼虫ミクロフィラリア)は活発に運動し、毎日一定時刻に末梢(まっしょう)血管中に移動する。これを定期出現性といい、バンクロフト糸状虫では夜間10時ごろから翌朝4時ごろまで出現するので、この時刻以外に採血しても検出できない。

 バンクロフト糸状虫は熱帯から亜熱帯にかけて広く分布し、おもにアカイエカおよびネッタイイエカによって媒介される。この場合は初期の急性症状として熱発作(俗に「くさふるい」という)のほか、リンパ節炎、リンパ管炎、精巣炎、丹毒様皮膚炎などが現れ、慢性期には下肢腫脹(しゅちょう)、陰嚢水瘤(いんのうすいりゅう)、乳糜(にゅうび)尿のほか、象皮病が認められる。これらの症状は1年以上にわたってみられる。

 これに対してマレー糸状虫は、インド、東南アジア、中国南部、朝鮮半島南西部に分布し、おもにトウゴウヤブカによって媒介される。この場合は乳糜尿がほとんどみられず、象皮病も四肢末端に限られる。日本では近年カの駆除対策の結果、感染者は著しく減少している。なお、熱帯地方には、皮膚にかゆみや脱色素斑(はん)を生ずる回旋糸状虫(オンコセルカ)症や昼間定期出現性をもつロア糸状虫症などもある。

 治療としては、保虫者に対してジエチルカルバマジン(スパトニン)を投与する。予防としては、保虫者への薬剤投与とともに、媒介するカの殺滅を目的として発生場所に殺虫剤散布を行う。

[松本慶蔵・山本真志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィラリア症」の意味・わかりやすい解説

フィラリア症
フィラリアしょう

「バンクロフト糸状虫症」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android