日本大百科全書(ニッポニカ) 「紅いコーリャン」の意味・わかりやすい解説
紅いコーリャン
あかいこーりゃん
中国映画。1987年作品。原題は紅高粱。監督はチャン・イーモウ(張藝謀)。1920年代末の中国山東(さんとう/シャントン)省。九児(ジョウアル)(コン・リー(鞏俐)、1965― )は父の命令で、親子ほど年が離れハンセン病を患う造り酒屋の男に嫁ぐことになる。輿(こし)入れの道中に盗賊に襲われるが、御輿(みこし)の担ぎ手の余(ユー)(チアン・ウェン(姜文))の助けで救われる。その後実家に里帰りした帰路、ふたたび彼女は賊に襲われるが、今度の賊は余で、お互いひかれあっていた2人はコーリャン畑で結ばれる。やがて行方不明となった夫にかわり、九児が造り酒屋を継ぎ、余と結婚。コーリャン畑で身ごもった息子の豆官(ドグゥアン)も成長して一家は幸せな日々を過ごすが、それもつかのま、村に日本軍が侵攻してくる。余と仲間たちは決死の覚悟で立ち向かう。荒唐無稽(こうとうむけい)で神話的なストーリーと、鮮烈な赤色を強調した緻密(ちみつ)な色彩設計が印象に残る、チャン・イーモウの監督デビュー作。第38回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。中国映画の「第五世代」を代表する1本で、監督チャン・イーモウと女優コン・リーのコンビ第1作。このコンビはその後も『菊豆(チュイトウ)』(1990)、『紅夢(こうむ)』(1991)、『秋菊の物語』(1992)などを連作した。原作・共同脚本のモー・イエン(莫言)は2012年にノーベル文学賞を受賞。
[石坂健治]