莫言(読み)モー・イェン

現代外国人名録2016 「莫言」の解説

莫 言
モー・イェン
Mo Yan

職業・肩書
作家

国籍
中国

生年月日
1955年2月17日

出生地
山東省高密県

本名
管 謨業(コワン モーイエ)〈Guan Moye〉

学歴
中国人民解放軍芸術学院文学

勲章褒章
フランス芸術文化勲章

受賞
ノーベル文学賞〔2012年〕,国際ノニーノ賞,福岡アジア文化賞(大賞,第17回,日本)〔2006年〕

経歴
山東省高密県の農民の子として生まれる。文化大革命により小学校を中退牛飼い、臨時工などを経て、1976年人民解放軍に入隊。’81年から執筆活動を始め、’84年に解放軍の芸術学院文芸部に入学した。’85年「透明的紅蘿卜(透明な赤蕪)」で作風を確立、貧しい農村と、そこの農民を描き、“土のにおいが濃厚”と評された。抗日戦期の高密県一帯の農村を舞台に無頼漢たちが暴れまわるさまを描いた「紅い高梁」(’86年)はチャン・イーモウ(張芸謀)監督により「紅いコーリャン」として映画化され、ベルリン国際映画祭でグランプリを受賞、世界的な評価を得る。長編「紅い高梁家族」には続編4編を収める。’96年の「豊乳肥臀」は性的描写などが問題視され、中国で一時発禁処分になった。ロマン・ロランマルクスクンデラ等の影響を受け、近年の作品には農村風景や自然の描写に登場人物の心象風影を投影した幻想的なものが多い。中国現代文学の第一人者で、2012年中国国籍の作家として初のノーベル文学賞を受賞。他の作品に「天堂蒜苔之歌」「十三歩」「酒国 特捜検事丁鈎児の冒険」「至福のとき」(中短編集)「白檀の刑」「白い犬とブランコ」(短編集,「故郷の香り」として映画化)「四十一炮」「転生夢現」「蛙鳴」など。“言うこと莫かれ”というペンネームは余計なことをしゃべらぬよう自分を戒めるため。中国政府公認の中国作家協会の副主席を務める。1999年初来日。2006年福岡アジア文化賞大賞を受賞。2011年7月再来日。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「莫言」の意味・わかりやすい解説

莫言
ばくげん / モーイエン
(1955― )

中国の作家。山東省出身。本名は管謨業(かんぼぎょう)。莫言は「言う莫(なか)れ」の意味で、子どものころはおしゃべりだったため、母親によく注意されたことばをペンネームにした。貧しい農家に生まれ、授業料を払えずに小学校を中退したが、羊の放牧をしながら多くの本を読んでいたという。1976年に人民解放軍に入隊し、軍の図書室の管理員などをしながら執筆活動を開始。1986年に発表した、故郷を舞台に日中戦争を描いた『赤い高粱(こうりゃん)』が大ヒットし、作家として注目された。その後、現実と幻想を織り交ぜたマジックリアリズムとよばれる手法で、次々と話題作を発表。「性描写が露骨だ」などの理由で一時発禁処分を受けた『豊乳肥臀(ほうにゅうひでん)』や、一人っ子政策の問題点を指摘する『蛙鳴(あめい)』(中国語原題『蛙』)など、中国当局のタブーに挑戦する作品も多かった。軍隊から退役後、北京(ペキン)師範大学で修士号を取得した。2012年に「幻想的なリアリズムによって民話、歴史、現代を融合させた」ことなどを理由に、中国籍の作家として初めてノーベル文学賞を受賞した。受賞の知らせを受けた記者会見で、服役中のノーベル平和賞受賞者の劉暁波(りゅうぎょうは)について、「可能な限り早期に釈放されることを願う」と語り、中国政府を暗に批判したことが話題となった。

[矢板明夫]

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百科事典マイペディア 「莫言」の意味・わかりやすい解説

莫言【ばくげん】

現代中国の作家,人民解放軍中佐。父が人民共和国成立前に上層中農であったため,社会主義体制下では貧困と差別に苦しんだ。文化大革命の開始後,小学校を中退して実家の農業を手伝い,1976年人民解放軍に入隊。1981年に創作を始め,フォークナーガルシア・マルケスらの影響を受け,中国農村の驚異的な現実を描き出す独特の魔術的リアリズムの境地を開いた。邦訳のある長編《赤い高粱一族》,短編集《中国の村から》《花束を抱く女》などは目まぐるしく交錯する叙述の時空と中国農民の心性の表出を特徴とする。近作の長編《酒国》(1993年)は,酒宴に幼児の人肉料理を食べているという共産党幹部たちと,その情報を得た敏腕の特捜検事の物語で,三層のテクストを構築して新境地を開いた。《豊かな乳房,肥えた尻》(1996年)は〈大躍進〉政策や文革を農民の視点から批判したため,再版が禁じられた。
→関連項目ルーツ文学

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知恵蔵mini 「莫言」の解説

莫言

中華人民共和国の作家。1955年2月17日生まれ、 中国山東省高密市出身。本名は管謨業。1976年、人民解放軍に入隊したが、その後文学に転身、85年『透明な赤蕪』で作家デビュー。『赤い高粱』は、87年に「紅いコーリャン」とのタイトルで映画化され、88年「ベルリン国際映画祭金熊賞」を受賞、世界に広く知られるようになった。90年ころより、日常と非日常が融合した「マジックリアリズム」の手法で、中国の農村を幻想的かつ骨太に描いた諸作品を発表、中国文学を大きく進展させた。2003年には『白い犬とブランコ』が映画化され(邦題:故郷の香り)、「第16回東京国際映画祭東京グランプリ」を受賞。12年10月、「幻覚的なリアリズムを通して民話、歴史、現代を融合させた業績」により、中国籍の作家として初のノーベル文学賞を受賞した。

(2012-10-15)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「莫言」の意味・わかりやすい解説

莫言
ばくげん

「モーイエン(莫言)」のページをご覧ください。

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