細川頼直(読み)ほそかわよりなお

日本大百科全書(ニッポニカ) 「細川頼直」の意味・わかりやすい解説

細川頼直
ほそかわよりなお
(?―1796)

江戸時代の暦学者。『機巧図彙(からくりずい)』の著者。通称半蔵、字(あざな)を方卿、万象丘陵と号した。土佐国(高知県)長岡郡西野地村(現、南国市)の郷士の家に生まれる。渋川春海(しぶかわはるみ)の学統の川谷薊山(かわたにけいざん)(1706―1769)に学んだ。寛政(かんせい)(1789~1801)の初め江戸に出て、当時、関(せき)流の高名な算家藤田貞資(さだすけ)(雄山)について暦数を学び、1795年(寛政7)公儀による改暦作業のおり、天文方御用手伝に選ばれ、幕府天文方の山路才助(1761―1810)、吉田靭負(ゆきえ)、渋川主水(もんど)、奥村郡太夫らを助けた。翌寛政8年、江戸で世を去った。機器(からくり)にも非常な興味をもち、1796年、江戸で出版した『機巧図彙』には、時計や茶運び人形などのからくりを解説している。これは精確な図法を用いた出色の江戸時代の機械技術書として有名である。

[菊池俊彦]

『塚田泰三郎著『和時計』(1960・東邦書院)』『立川昭二著『からくり』(1969・法政大学出版局)』『『江戸科学古典叢書3 璣訓蒙鑑草・機巧図彙』(1976・恒和出版)』


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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「細川頼直」の解説

細川頼直 ほそかわ-よりなお

?-1796 江戸時代中期-後期の暦算家,からくり技術者。
土佐(高知県)長岡の郷士。川谷貞六の弟子片岡直次郎に天文・暦学を,のち江戸にでて藤田貞資(さだすけ)に数学をまなぶ。寛政7年幕府の改暦事業の天文方手伝となった。また各種のからくりの発明工夫にすぐれ,「機巧図彙(からくりずい)」をあらわした。寛政8年死去。通称は半蔵。号は万象,丘陵。

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朝日日本歴史人物事典 「細川頼直」の解説

細川頼直

没年:寛政8(1796)
生年:生年不詳
江戸中期の土佐国(高知県)長岡の郷士,暦学者。川谷貞六の弟子の片岡直次郎に学ぶ。半蔵または半兵衛と称した。江戸に出て寛政5(1793)年江戸幕府天文方手伝となる。算学は藤田定資の高弟で,機器の発明・工夫に長じ寛政8年時計の製作法を書いた『機巧図彙』(3巻)を著した。

(内田正男)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の細川頼直の言及

【からくり】より

…玩具とはいえ,メカニズムを追究したからくりは,江戸時代の機械学的知識の最高水準を示す精密機械といえる。そして1796年(寛政8)のこと,土佐の理学者細川頼直によって《機巧図彙(からくりずい)》という自動人形製作のテキストが出版される。ここでは和時計とともに〈茶運人形〉をはじめ,〈五段返〉(宙返り人形),〈竜門滝〉(鯉の滝のぼり),〈鼓笛児童〉(オルゴール人形)など自動制御をくみ込んだ9種の自動人形を科学的に図解している。…

※「細川頼直」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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