絵巻の基本的な形態。物語の本文を書いた紙と絵をかいた紙とを,交互に継いで連ねたもの。詞を先とし,絵の部分をその後に続ける。紙を重ね合わせてとじることもある。絵は,墨書きの上に幾度か彩色を施して再び輪郭の線を墨で書き入れる作り絵の描法をとることも,白描でなされる場合もある。普通,絵は絹布にかくが,物語を絵にする場合は〈帋絵(かみえ)〉といい,料紙にかくのを常とした。《明月記》天福1年(1233)3月20日条に〈源氏の絵〉とあり,《看聞日記》には,永享10年(1438)5月16日条以下〈源氏絵〉に関する記事がたびたび見えており,同年9月14日条には,〈絵詞〉を経師に〈切続(きりつぎ)〉させたとの記事がある。また《看聞日記》紙背〈物語目録〉(応永27年11月13日写)には,〈石山縁起絵詞〉1巻,〈智興内供絵詞〉1帖などとある。現存のもので比較的古い作例には,《大江山絵詞》3巻(逸翁美術館),《一遍上人絵詞》(1299成立),《最須敬重絵詞》(1352成立),《宇治八幡宮絵詞》(宝治年中(1247-49)成立),応永年中(1394-1428)の《駿牛絵詞》《山王絵詞》などがある。呼称については,必ずしも原本につかず,慣用に従って〈絵詞〉とするものも少なくない。《康富(やすとみ)記》では〈画詞〉とも表記している。
→絵巻
執筆者:徳江 元正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…絵巻物とも呼ぶ。この名称は江戸時代に一般化したもので,古代・中世においては〈……絵〉と称され,また今日では絵巻と同義語のように用いられている〈絵詞〉は本来,絵巻の詞書(ことばがき)を指すものであった。この巻物形式の絵画は中国から伝わり(中国では画巻と呼ぶ),日本で独自の発展をとげ,日本絵画史の代表的な領域を形成した。…
※「絵詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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