改訂新版 世界大百科事典 「綴術算経」の意味・わかりやすい解説
綴術算経 (てつじゅつさんけい)
建部賢弘が著した数学方法論の書。1722年(享保7)の序がある。内容は,探法則,探術理,探員数の3章に分け,各章を4条に分けて解説している。最後に〈自質の説〉と題して数学を勉強する心構えを述べ,中根元圭のくふうした問題,すなわち3辺が公差1の等差級数をなす整数値の三角形で,面積が有理数となる場合の解法を付録として終わっている。建部のいう綴術は帰納法のことで,帰納法こそ数学の問題を考える基本だとしている。本書は,(arcsin x)2のべき級数展開の方法が示されているので有名であるが,関孝和についての記述もあり,数学史上貴重な文献となっている。例えば,球の表面積を求めるのに,関は球を錐の集りとみて,として求め,建部はr+⊿rとrの二つの球を考えて,その体積の差を⊿rで割る。すなわち,としたことなど興味深い記事が多い。
執筆者:下平 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報