日本大百科全書(ニッポニカ) 「習近平思想」の意味・わかりやすい解説
習近平思想
しゅうきんぺいしそう
中国共産党の基本的な方向性を示した思想。2017年10月の第19回党大会で、「毛沢東(もうたくとう)思想」「鄧小平(とうしょうへい)理論」とともに党の基本方針を示す重要な概念として、正式に採択された。正しくは「習近平『新時代の中国の特色ある社会主義』思想」といわれる。その内容は2002年以来強調されてきた「中華民族の偉大な復興」の現実化であり、習近平が2012年の就任時に提唱した「二つの百周年」(一つは中国共産党建党100年=2021年、二つには人民共和国建国100年=2049年)を成功裏に迎えることであった。第19回党大会「政治報告」では、二つの百周年の間に2035年を節目として設定した。その前半には社会主義近代化の実現、経済力・科学技術力の躍進、革新型国家の樹立、法治をほぼ完成させ、国の統治体系とガバナンスの近代化をほぼ実現する。後半には物質文明、政治文明、精神文明、社会文明、エコ文明(環境保護や自然との調和に配慮する文明)を全面的に向上させ、総合国力と国際影響力でトップの国になり、中華民族を世界民族の林に屹立(きつりつ)させ、国防・軍隊の近代化を完成させ世界一流の軍隊にする、などを掲げた。また、毛沢東の功績を「站起来(たんきらい)(立ち上がる)」(民族解放、国家の独立)、鄧小平の功績を「富起来(豊かになる)」(改革開放、経済発展)と表現したのに対して、習近平の功績を「強起来(強くなる)」と表現している。前二者はすでに評価されている結果であるが、習近平の場合はまだ現在進行形で、目標とでもいうべきものである。その意味では、習近平思想が本当に中国共産党の歴史のなかで、前二者と同じように輝き続けるか否かは、これからの習の指導力とそれによる成果によって定められることになるであろう。
[天児 慧 2018年4月18日]